半兵衛

ゲームの規則の半兵衛のレビュー・感想・評価

ゲームの規則(1939年製作の映画)
4.5
公開当時複数の不倫関係のドラマが観客や批評家の不興を買い炎上したらしいが、それを踏まえて鑑賞するとこの映画の上流階級そのものが実は当時のフランスだったのではと思えてきた。そしてルノワール監督がフランスがこれから巻き起こる事態に反応して本作を作ったにも関わらずそれに気づかなかったということも。

表向きは公爵家の華麗なパーティーと彼らの不倫ドラマを赤裸々に描いたゴージャスな内容だが、その割にはみな狂騒してばかりでそのうえ「ユダヤ人」や「戦争」といった意味深な台詞の数々や部品が突然取れたりするなど不気味な行動の数々が意味深すぎて笑えずむしろこの映画の裏で何かが起こっているのではと深読みしてしまう。そして異様に尺の長い狩りの場面の薄気味悪さ。

ドラマが進行するにつれてその不気味なものが徐々に吹き出してきて、パーティーを侵食して登場人物の化けの皮を剥がしていく様は面白いというより不気味な刺激があり心がゾワゾワするも同時にアンモラルな楽しさがあるのも事実。そこからの一発の銃声により全てが崩壊する終盤で、狩りで殺されていったウサギなど小動物たちのような立場に彼らはなっていたことを強烈に突きつける。そこからの何かが起こることを示唆する発言で締めくくるラストはひたすら苦い。

当時の歴史的背景を知らなくても楽しめるけれど、本作はフランスやヨーロッパが公開当時どうなっていたのかを踏まえていると一層深く鑑賞できるはず。
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