とあるパチーノ

ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズのとあるパチーノのレビュー・感想・評価

3.9
石岡英子展でこの作品を知り、
気になったけどその後調べるのを忘れていたら、Criterion社のBlu-rayをamazonで買えるという話を先日たまたま聞き、
即購入からの視聴。

いわゆるおしゃれ系アート映画。

これでもかと気合の入りまくった音楽・衣装・映像美に対して、
編集の視覚効果が今の時代に見るとチープに感じてしまうアンバランスさがある。

緒形拳演じる三島由紀夫の違和感が強いことも相まって、
この映画の世界観が三島の美意識をどこまで再現出来ているものなのか、
どことなく腑に落ちない感じで終わって行った印象。

特に最後の切腹シーンで緒形拳の顔にズームのエフェクトがかかった時は、
不覚にも緊張の糸が切れて笑ってしまった。

とは言え総じて自分は好きな映画でした。

紆余曲折を経て日本での上映が出来なかった本作に関して、
もしも主演が高倉健だったら、
もしも主演が坂本龍一だったら、
もしも第二部が『鏡子の家』ではなくもっと同性愛色の強い『禁色』だったらと、
ネットで見ただけでは何が実際のエピソードなのか分からないけれど、
構想から日本での上映中止までの制作の裏ストーリーをドキュメンタリーで見られれば面白い。


余談ですが、
作中に三島由紀夫のペンネームの由来を話すシーンで、
夜空に美しく上がった花火がぱっと散って行くように(もう一つ何かに例えてましたが)という感じで、
見し間行きお的な掛け言葉として、
自分は美しいままにさっと死んで行きたいというニュアンスを匂わせていましたが、
英語字幕では全く触れられておらず、
普段外国語の映画を日本語字幕で理解している(したつもりになっている)自分としては、
せめて英語ぐらいは字幕無しで見れるようになりたいと改めて思いました。