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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのNのレビュー・感想・評価

4.5
作品を見て1週間以上経っても尚、じわじわ色んな場面が脳内に押し寄せてくる、”たった198分"で描かれた"たった3日間"のある主婦ジャンヌの話。



3時間越えの超長編だから心して臨んだけど、正直前半はまあキツイキツイ。

3日間構成のうちの1日目は本当に当たり前の、誰が見てもわかる彼女にとっての日常が流れていて全くもって変化が無い。初めましてのある主婦のある1日の過ごし方をただ見ているだけ。本当に何も起きない。音声も少ないから周りの観客の呼吸や動きが気になって仕方なかったけど辛抱強く見ていた感じ。

だからこそ2,3日目が強烈だった。"何の変化も起きない"1日目の完璧さ、凄さを思い知った。

彼女が今まで築き上げてきた日常に少しずつ、一気にでは無く少しずつ違和感が表れ、蝕むように本当に些細なことから彼女の心情に変化をもたらしていく。

3日目の彼女はいつ爆発してもおかしくないくらい恐ろしかったし、彼女の行動、表情、感情にヒビが入っているのは明らかだった。
3日目は1番セリフが無く、ジャンヌが動きもしない、静止画かと思うくらい微動だにしない、そんな場面が増え、今までとは何かが違うということが強調されていて、見ている側の恐怖心を余計に増幅させた。

3日目の赤子が延々と泣き止まない場面は、彼女の手が赤子の首に伸びるんじゃないかと勝手にヒヤヒヤ。

結末だけ見れば在り来りでは…?となるけどそれまでの彼女の執拗に描かれた日常と、最後の長回しの場面が、その結末をぐんと意味あるものにしているように感じた。

とにかくこちらへの見せ方が上手かったし少なくとも今まで見たことないタイプの作品だった。
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