ブリュッセルで息子と暮らす中年女性の日常に現れる綻びを描いた作品。
一見何も起こっていないジャンヌのルーティンを淡々と見せながら、彼女の空虚な心と静かな崩壊を描く。
その手法がまずカッコ良すぎるし、200分全然飽きない。
テーブルセットをしていく姿、皿洗いをする後ろ姿、入浴して浴槽を洗う姿。
そんな何事もなく過ぎる日常の姿から、ジャンヌの心の奥底に鬱積したフラストレーションがひたひたと伝わってくる。
カフェや自宅でジャンヌが物思いに耽るシーンからは、彼女が自分の生活の空虚さに気づいていくような心境が感じられる。
そして規則正しい生活が音もなく綻び始め、物語は突如として終焉を迎える。
主演のデルフィーヌ・セイリグの演技は素晴らしい。
彼女の代表作『去年マリエンバートで』にも通じる芸術性を感じる。