Harukiさんの映画レビュー・感想・評価

Haruki

Haruki

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何が彼女をそうさせたか(1930年製作の映画)

4.6

父親が自殺してしまった少女が住まいと職を転々としながら、凄絶な人生を送る姿を描いたサイレント映画。

召使いとしてこき使われたり、乱暴されたり、生活が困窮したり。

すみ子は貧しく苦しい生活を送りなが
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終電車(1980年製作の映画)

4.0

ナチス占領下のフランスを舞台に、劇場の支配人である夫と看板女優の妻、そして新たに雇われた男優の三角関係を描いた作品。

地下室に隠れながら演出の指示出しをするルカと、舞台の上で稽古をしながら不思議な感
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すべてうまくいきますように(2021年製作の映画)

4.4

安楽死を望む父親とそれに向き合う娘の姿を描いたヒューマンドラマ。

わがままでエネルギッシュな父親とは、良くない思い出もある娘たち。

父が安楽死を希望することに驚き葛藤しながらも、娘たちは父の望みを
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ホームワーク(1989年製作の映画)

3.8

アッバス•キアロスタミ監督が小学生にインタビューをし、それぞれの複雑な家庭事情とイランの教育システムに潜む問題点を浮き彫りにするドキュメンタリー。

宿題に追われる子どもたちと、それを見ることに追われ
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私の秘密の花(1995年製作の映画)

4.1

ロマンス小説家としての顔を持つ女性が人生を再出発する姿を描いた作品。

ペンネームで執筆していることを周りにも隠し、軍人である夫の帰りをひた待つ主人公。
彼女の数奇な人生を通して、愛に伴う哀しみと優し
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戸田家の兄妹(1941年製作の映画)

4.4

当主を失った大家族の関係を悲喜交々に描いた作品。

小津監督ののちの傑作『東京物語』を髣髴とさせる設定で、家族であっても冷徹な人間のさがを生々しく映し出す。

印象的なシーンがたくさんあって、全シーン
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ウィ、シェフ!(2022年製作の映画)

4.0

人気レストランを辞めたスーシェフが、移民の少年たちの支援施設でシェフとして働き、施設の子どもたちと絆を深めていく物語。

カティと少年たちの交流は複雑な事情をかかえる少年たちだけでなく、過酷な生い立ち
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アンダー・ザ・スキン 種の捕食(2013年製作の映画)

4.4

女性の姿をした地球外生命体が男たちを捕食するSFスリラー。

"捕食者"というC級映画にありがちな設定を、非常にソリッドかつスタイリッシュに昇華させている。

まず視覚的に素晴らしく、静謐な物語も魅惑
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ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)

4.5

1942年1月20日、ドイツの高官たちが邸宅に集まって「ユダヤ人問題の最終的解決」について話し合った。
その会議の議事録を基にして作られた作品。

他のホロコースト映画とは一際異彩を放つ。

幹部たち
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ボーン・アルティメイタム(2007年製作の映画)

4.2

『ジェイソン•ボーン』シリーズの第3作。
記憶を失った工作員とCIAの対立を描いた完結編。

音響や編集、撮影がとてつもない迫力で、シリーズ屈指のスリルと興奮を与えてくれる。

シリーズを終結させるス
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冬の光(1962年製作の映画)

3.9

ベルイマンによる「神の沈黙」三部作の第2作。

信仰心が揺らぎつつある牧師の心を見つめる作品。

冒頭のミサのシーンがゆったり10分以上もあり、そこで登場人物たちの紹介をしつつ、牧師の信仰に対する温度
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.1

太平洋戦争末期、東京から疎開した少年が人間の言葉を話す青サギに導かれ、不思議な世界を旅するファンタジー。

決して"巧く"はないアニメーションが戦時中の手触りを感じさせる。
そうやって時代設定をしっか
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冬の旅(1985年製作の映画)

4.4

フランスの片田舎の町で凍死した少女の最期の数週間を、出会った人々の視点からドキュメンタリータッチに描いた作品。

リュックひとつで放浪する彼女は道中でさまざまな人たちと出会う。

お金もない、家もない
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ノベンバー(2017年製作の映画)

4.2

エストニアの寒村に暮らす人々の物語をダークファンタジーとして描いた作品。

民話やアニミズム的思想、エストニアのナショナリズムを以て描かれる世界は土着的で荒漠としており、何より幻惑的に美しい。

悪魔
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アイ・アム セリーヌ・ディオン ~病との戦いの中で~(2024年製作の映画)

4.3

世界的ディーヴァ、セリーヌ•ディオンが珍しい神経疾患スティッフパーソン症候群に立ち向かう姿を捉えたドキュメンタリー。

闘病生活だけではなく、彼女の生い立ちや家族との関係をしっかり映しており、病気と闘
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.5

ドゥニ•ヴィルヌーヴ監督による『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編。

前作で描かれた物語がより壮大に展開している。
映像美と衣装デザイン、音響で創られる世界観に惹き込まれる。

今作では俳優陣の演
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異人たち(2023年製作の映画)

4.7

脚本家の男が偶然出会った若い男とロマンスを発展させながら、幼少期の記憶に思いを馳せる物語。

ほぼ4人だけで描かれる物語は濃密で感動的。

ファンタジックな設定と幻想的な映像を通して、主人公の哀しみと
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ロスバンド(2018年製作の映画)

4.8

ロックバンドで成功を夢見る少年たちが、バンド大会の決勝に出場するさまを描くロードムービー。

ロックが大好きな親友2人、彼らのバンドに加入した9歳の少女、そして運転手を務める青年。

彼らの友情、絆は
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私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

4.0

1973年、チェコスロバキアのプラハで衝撃的な事件を起こした実在の女性オルガ•ヘプナロヴァーの半生を描いた作品。

オルガは、世界に対して無関心になっていきつつも、自分が受けた嘲笑や傷を世界に償わせよ
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.1

西部開拓時代のオレゴン、運命的な出会いをした料理人と中国系移民の友情を描いた作品。

インディペンデント映画界の至宝ケリー•ライカートによる傑作。

ある日、彼らの住む町で初めての牛が一頭持ち込まれる
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アウトスタンディング: コメディ・レボリューション(2024年製作の映画)

4.6

LGBTQ+のコメディアンたちのエピソードを交えながらクィアたちのコメディの歴史に迫るドキュメンタリー。

性自認、カミングアウト、世間の差別的反応。
彼らが語る経験や心情はリアルで切実。

性自認だ
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美しき仕事 4Kレストア版(1999年製作の映画)

4.3

ジブチに駐留するフランスの外国人部隊とそれを率いる指揮官の日々を描く作品。

国際的に評価が高く、ずっと観たかった。

太陽と海が眩しいアフリカの地を背景に、切なく美しい物語を紡いでいく。

現実離れ
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アメリカン・スプレンダー(2003年製作の映画)

4.5

アメリカのアングラコミック『アメリカン•スプレンダー』の作者ハービー•ピーカーの半生を描いた作品。

本人が本人役として出演して語りもおこなっている。
その他、いろいろとメタ的なシーンもある斬新な演出
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イノセンツ(2021年製作の映画)

4.8

超能力に目覚める子どもたちの姿を描いたサイコスリラー。

同じ団地に暮らす子どもたちが遊びながら超能力に目覚めたことを知っていく。

子どもの無垢な残酷さを描いた作品は今までもたくさんあったが、本作ほ
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サポート・ザ・ガールズ(2018年製作の映画)

4.0

スポーツバーでマネージャーを務める女性の奮闘を描いた作品。

従業員と顧客を尊重し、周りから慕われる主人公リサ。
彼女の悪戦苦闘を通し、女性差別や人種差別のリアルを見つめる。

決して重苦しくなく、派
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タレント(2023年製作の映画)

4.1

CM撮影の現場でアシスタントとして働くトミーはスター俳優の目に留まるチャンスを手に入れる。

ダークなストーリーと緊張感のある演出で、変化への願望を生々しく描く。

主演俳優の演技も見事。

(2023年製作の映画)

4.0

インドを旅するバックパッカーの男女が、バスに乗り合わせた女性から赤ちゃんを一時的に預かる。

コンパクトかつわかりやすいストーリーに凝縮された人間のリアル。

前半は男性がインドへの偏見を雑談として話
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ヤマアラシのジレンマ(2023年製作の映画)

4.3

全編手話で構成されている短編作品。

依存症の聾者のためのリハビリ施設で出会った男女の交流を静かに描く。

全編手話ということで手話の意味が字幕で出るのかと思っていたら、それすらなかった。

彼らのア
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パ・コンコンの袋(2023年製作の映画)

3.9

近所に住む不思議な男パ•コンコン。
孤独で子どもから恐れられている彼に立ち向かうことを決意した少女の姿を描いた作品。

サスペンスフルな雰囲気を持ってはいるが、最後まで見ると映画全体の持つ雰囲気や結末
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デジタルダイアリー(2023年製作の映画)

4.0

他人の携帯を盗んで持ち主を脅迫する非行少年とつるむ主人公。

ある日盗んだ携帯に残されていた持ち主の日々の記録に夢中になる。

彼女が赤裸々に語る自分の出来事や心情に、主人公も共感して自身の生活を見つ
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あたらしい世界(2023年製作の映画)

3.8

6月の晴れた日、カナメがある決意を持って親友たちを呼び出したが、来たのはフクだけだった。

よくある設定かと思ったら、不思議な感覚の作品になっている。

ファンタジックなポイントが2つくらいあって、程
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鉱山の男たち(2024年製作の映画)

4.2

鉱山で過酷に働く男はある日坑道の事故から仲間を救うが、ひとりの仲間だけを死なせてしまう。

主人公が尊厳や誇りを守ろうとするがゆえに起きてしまった悲劇。
良心の呵責をかかえ、真実を言うか言わまいか迷う
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to I(2024年製作の映画)

2.6

屋上から飛び降りようとする少女と、彼女を止めた女性。

お互いが誰かもわからぬまま一緒に過ごす。

ストーリーはわかるけど薄っぺらいし、映画的にしようとする演出がダサい。

古いMVのような音楽と映像
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姉妹(2023年製作の映画)

3.9

名作『バッド•ジーニアス 危険な天才たち』の監督が手がける家族の物語。

スピード感やスタイリッシュさ、切なさが詰まったさすがの演出。

強みでもありしがらみでもある、家族という枠組みのストーリーをド
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マスコット(2015年製作の映画)

3.9

長年バスケチームのマスコットを演じてきた男が、突然クビになり自己喪失に陥る。

マスコットであることに誇りを持ち、それを失った喪失感を描く。
設定がそもそもちょっとユーモラスでおもしろい。

今までの
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すぐ戻るね(2023年製作の映画)

3.7

母親が買い物に行く間にひとり家に残された少女が体験する恐怖を描いた短編ホラー。

大きな新しさや深さはない感じだけど、シンプルな恐怖がしっかり詰まっている。

スペインにこういう民話があるのだろうか。