考えてはいけないとジャンヌは知っていた
日々のルーティンに忙殺されながら365日流されていくこと、それだけが普通を保っていられる術だとわかっていたのに、僅かなズレが彼女を狂わせる
予定にはないはずの空白が、彼女に時間を与えてしまったのだ
考えるという致命的な時間を
些細な躓きに苛立つジャンヌが密かに取り乱す様は、不穏な気配に満ちている
きっかけはジャンヌ自身なのか男なのか、密室でのことはわからない
だが、2日目のジャガイモを捨てる時の彼女の気持ちは手に取るようにわかる
あの苛立ちも焦燥も嫌悪も軽蔑もどこかにぶつけられたなら、あんな形の解放を迎えることはなかったと思う
これだけの長尺と台詞の少なさにもかかわらず、退屈どころか胸が騒いで仕方がないという驚き