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水のないプールのtakのレビュー・感想・評価

水のないプール(1982年製作の映画)
3.5
高校1年の夏。映画ファンを公言して、貪欲に何でも観ようとしていた僕を、叔父が湯布院映画祭に連れて行ってくれた。新旧日本映画が観られて、俳優や監督、スタッフの話を聞くことができるシンポジウムもある温泉地の素敵な映画祭。そこで観た一本が、この「水のないプール」だった。予備知識、皆無。

えっ?え?叔父さん、(もうすぐ)16歳のオレがこれ観ていいの?間違いじゃないの?

全編裸、裸、裸…中村れい子が脱がされる場面でスクリーンいっぱいに映し出されたヒップ。ただでさえドキドキしてるのに、生唾呑み込む音が隣の席に座ってるお姉さんに聞こえるんじゃないか、とハラハラ。

窓からクロロホルムを部屋に流し込み、眠り込んだ女性を犯すという、実際に起きた事件を基にした物語。ボソボソしゃべる陰気な顔した主人公。次第に犯行が大胆になり、女性の為に朝食を用意したり、悪戯めいた行動までするようになる。それは誰からも抑圧されない、自分だけの世界。でもそれは決して彼を満たしてくれることはない。水のないプールはそのイメージ。逮捕された後で、中村れい子がつぶやく「もう誰も来てくれないじゃない」とのひと言。大人が都会で生きていく寂しさってヤツを、少年は垣間見てしまったのでした。

叔父さんはそのままシンポジウム会場に僕を連れて行った。会場に現れたのは、若松孝二監督、内田裕也、安岡力也のお三方。ぎゃー、さっきスクリーンで観た人たちが目の前にいる。安岡力也、デカい!怖い!何を語っておられたのか、あんまり覚えていないけど、とにかくギラギラしたアツい空気を感じたのでした。ゲストの名前が画面に映されると大きな拍手、原田芳雄やタモリなど脇役が登場するとまた拍手。映画の楽しさを共有するって、こういうことなんだな。貴重な経験でした。

内田裕也氏のご冥福をお祈りします。
シェケナベイベー、ロックンロール。
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