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降霊 KOUREIのmichikoのレビュー・感想・評価

降霊 KOUREI(1999年製作の映画)
3.0
1964年の『雨の午後の降霊祭』を黒沢清監督が2時間ドラマとしてアレンジ・リメイクした本作。
恐怖シーンは確かに独特で異様。音で驚かすのでは無く“何かがいる空気感”を映像化した事はジャパニーズホラーの十八番であり、本作はその金字塔である。

ただ本当に恐ろしいのはこの平々凡々な夫婦に蠢く見えざる想いであり、これまで信じてきた物が崩れ去る絶望感である。2人の会話からは平凡でありながらも互いに想いあい、幸せな家庭を築いている様に思えた。しかし妻は自分の人生に満足しているわけでは無く、そんな妻の真意も旦那は気付くこともなく、逆に目を瞑っていた。妻の真の想いを暴言と一緒に叩きつけられた夫は、彼女の充足感を満たすための悪意のある行為に手を染めていく。これまでの夫の気持ちを裏切る妻の行為、そして妻に寄り添うつもりが理解しようともしなかった夫の罪。妻を幸せにすると誓った役所広司の顔がみるみる窪んでいく様は最高に最悪で精神的にしんどかった。この“相手を満足させられていなかった暴露”はNTRとはまた違う新しいジャンルなのではないか?吐きそうになる。

色々ストーリーはツッコミどころがあり、あまりにも無謀で短略的なその無計画さに辟易するが、これまた平凡さの現れなのであろうか。恐怖シーンの良さが相殺されてしまい少々残念に思えるが、それでもやはり恐怖演出の幅を広げてくれた本作の貢献は大きい。
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