あゆぞう

ある過去の行方のあゆぞうのレビュー・感想・評価

ある過去の行方(2013年製作の映画)
4.2
心の軋む音が130分間鳴り続ける

前の夫との間に二人の娘を持つ女、離婚の手続きをするために4年ぶりにフランスに戻ってきた夫、女と交際中の子連れの男、3人を軸にしたドラマ

物語の要となる出来事をめぐるミステリーとしても味わえる秀作

何気ない会話、何気ない設定なのに何度もハッとさせられて、クオリティとして是枝裕和監督の眼差しに近いものを感じたのだけれど、気分が滅入って心かき乱される嫌なコトが徹頭徹尾描かれる

冒頭の何分かで突然の大雨、ギアチェンジがうまくいかない、見たくない物が落っこちてくる、道を間違える、迎えに行った相手がいない、車が駐められない、自転車のチェーンがはずれている、握手しようとする手は汚れている……

劇伴はほとんどないながら、全編通してハンスジマーの曲が低く重く流れていたような印象

例えばドゥニヴィルヌーヴ、イニャリトゥ作品に通じる重苦しさだけれど、そこにあるのは個とシステムではなくてあくまで個と個の軋み

タバコが出てくるくらいで酒もドラッグも登場せず、貧困も社会的弱者もフィーチャーされず、第三者を悪として片付けられない分、逃げ場がない、気持ちの持って行き場がない

製作、準備にたっぷりと月日がかけられたこともあって、ベレニスベジョをはじめとするキャストは、まるで隠し撮りのドキュメンタリーを見ているかのようなクオリティを見せてくれる

車中のシーン、そういえばまだMT車に乗っていた頃、助手席の彼女と手を重ね、二人でギアチェンジをしたことを思い出してラブラブじゃんいやそうなんですよーこのこのーなんて一人掛け合いしてみるも、最初に思い浮かべたあの娘はATにしてからだし、あの娘じゃないしあの娘でもないはずだし……作品関係ないけど……口直しのぐぬぬな話

Citroën Berlingo Multispace







空港、ガラス越しの笑顔と口パク、大雨、痛めた手首、長女の迎え、路駐、取締り、サンバイザー、道間違える、自転車のチェーン修理、二段ベッド、寝具の移動、喧嘩、新しいパートナー、妻の自殺未遂、植物人間、クリーニング店、薬局、長女と継父、ブリュッセルに住む実父、妊娠、法廷で鳴る携帯、妊婦の喫煙、排水管の詰まり、壊れて届いたスーツケース、お土産事件、知り合いのレストラン、長女の告白、メール転送、アドレスは電話で、訛りがあった、シミをめぐる妻とクリーニング店員の諍い、不法就労、店員のなりすまし、イランのシチュー、誰かの穴埋め、妊娠は事故、なかったことに、妻への愛、知っていただろ、4年前に帰国した理由、聞く耳持たない、電車から降りてこない子供、おもちゃのヘリコプター、記憶を呼び起こすはずの香り
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