日本ではまず見かけない本場のフランス料理の数々。馴染みがない食べ物だからか食欲はそそられないけれど、芸術として見てしまう。
大統領専属の料理人を辞めたラボリが新たに料理の腕を奮い始めたのは、南極観測基地。大統領邸とは全く異なるむさ苦しい男たちが集まる場所だった。どちらが良いとか悪いとか比べることなく、場所を問わず純粋に料理を楽しんでいるラボリに憧れる。彼女の料理姿は常に手際が良く、自信に満ちている。
エドワール・ニニョンの「フランス料理讃歌」がお気に入りで幼い頃夢中になって暗記するほど読んだと語る、料理好きの大統領と意気投合するシーン。
料理が好きだと目を輝かせて語る大統領は普通の男性と同じだった。職種に関係なく、みんな懐かしいおふくろの味を好むものなのね。国のトップだからといって豪華に装飾された料理が食べたいだなんて食の好みが変わるわけではない。
カメラワークが良かった。舞台は主に現在と過去、ラボリが働く厨房の中なので、セットが目まぐるしく変わるような映画ではないのだが妙にお洒落。
ストーリーの半分が現在(南極での料理人)だから邦題は相応しくない気がする。原題「Les Saveurs du palais(宮殿の味)」は“場所が変わっても変わらない一流の味”という解釈なので良いと思うが。