【2013年キネマ旬報日本映画ベストテン 第1位】
88歳にして映画初主演となる赤木春恵を迎え、息子の視点から認知症になった母を描いたコメディ。監督は『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』『ニワトリはハダシだ』などのコメディの名手、森崎東。2年前に亡くなり、結果的に本作が遺作となった。
岡野雄一が西日本新聞に連載した同名漫画の実写化で、「ペコロス」は小さな玉ねぎという意味で、作者のハゲ頭を指している。
コメディではあったけどこんなに泣かされるとは思わなかった。みつえの人生に笑って泣いた。
みつえの生涯は幸せだったのだろうか。酒癖が悪く神経質な夫とはおそらくお見合い結婚、学校も行けず友だちとも会えず…
橋での感動的なシーンは素晴らしい。過去に戻って自らの人生を肯定できた瞬間だろう。たとえ無意識でも。「ボケるのも悪くないのかもね」
赤線といいランタン祭りといい鮮やかな撮影が素晴らしい。赤を効果的に使って過去と現在を上手く繋げている。
彼らを取り巻く人々も面白い。竹中直人は出てくるだけで笑うし、みつえの妹たちのループする会話にも笑った。
なんといっても赤木春恵!コメディ演技でありつつ哀愁も感じさせる流石の存在感。彼女がいたことで成り立つような作品。
あと大和田健介演じる孫まさきも偉いよ。あんなに面倒みてあげて。あんな人なかなかいないよ。僕も認知症の祖母がいたけどほとんど会いに行けなかったもんな…
何か特徴のある演出というわけではないけど、とにかく物語が素晴らしい。コメディと感動がいいバランスで入り交じった作品で、森崎東のベストワークではないだろうか?