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小さいおうちのnotitleのレビュー・感想・評価

小さいおうち(2013年製作の映画)
4.1
山田洋次とスタジオジブリの世界観の融合!
我らのソフィー婆ちゃんこと倍賞千恵子さんが若い頃を山田洋次演出で語る回想録という形式のお話である。
そっかぁ、倍賞千恵子さんが若くなると黒木華ちゃんになるのかぁ。
ベルリン国際映画祭で銀熊賞をいただいたとのことだが、女優賞しか受賞していないのだから、ほとんど黒木華ちゃんの功績だよね。

今のご時世に相変わらずフィルムで撮影されていることもそうだけど、チャカチャカ動き回らないどっしりとしたカメラ、庶民の目線で描かれるストーリー、リアリティを追求し過ぎない"芝居"はいかにも山田洋次の演出である。
米沢からやってきた主人公のタキちゃんが東北訛りだったり、笹野高史がやはり山形県は庄内出身の東北訛りだったりするあたりも、『たそがれ清兵衛』や『武士の一分』を彷彿させて面白い。
そこに、聴いてすぐに久石譲と分かる音楽の旋律、ソフィー婆ちゃんのナレーション、戦前・戦時を舞台にした時代設定がうまーい具合にミックスされて空想世界を作り出していて、実にスタジオジブリ感がある。

全体のほとんどが日常のシーンで構成されている映画だけれども、だらだらと退屈することもなく意外にワクワクして観られるので珍しいと思う。
女中さんが主人公となると、大抵はイジメやら何やらでツライ話になりがちなのに、本作はほのぼのとした感じ。そこは人情モノシリーズを何十年も撮ってきた山田洋次の力量かもしれぬ。

終盤のネタばらしは、どうも丁寧になりすぎている感じがするけれども、物語の締めくくりとしては、しっとりとしていて良い。もしかすると、あれはあまり鮮やかになりすぎないための演出だったのかもしれない。
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