黒田隆憲

悪の法則の黒田隆憲のレビュー・感想・評価

悪の法則(2013年製作の映画)
4.8
およそ5年半ぶりに観たけどやっぱり最高だった。脚本を読んだリドリー・スコットが『コヴェナント』を後回しにして撮ることを決め、『プロメテウス』を一緒に作り終えた直後のマイケル・ファスベンダーに脚本を見せたところ、ファスベンダーもすぐに出演を決めたというのも頷ける。

リドリー・スコットといえば、『エイリアン』や『ブレード・ランナー』など映画史に残る名作を数多く残してきて、これはどちらかというと「補欠」扱いなのだろうけど、個人的には彼の作品の中でも上位3位に入るくらい好き。デヴィッド・フィンチャーでいうところの『ゾディアック』的な。

「真実に温度はないわ」(キャメロン・ディアス)とか台詞が一々カッコ良い。物欲に目が眩んで麻薬ビジネスに加担したカウンセラー(ファスベンダー)が、カルテルに追い詰められ南米の有力者に助力を求めるも、「自分の運命を受け入れるべきだ」と諭された時の絶望感……「あ、もう俺は全てを失うんだな」と悟った彼の表情など、こちらの背筋も凍りつく思いだった。倫理観念のカケラもないマルキナ(キャメロン)が、飼っているチーターを引き合いに肉食動物を称賛するセリフも痺れたし、麻薬ブローカーのウェストリー(ブラピ)がスナッフフィルムにつて語るシーン、そしてそれが終盤の伏線回収につながっていく展開もゾクゾクした。ワイヤーを使ってバイカーの首を跳ねるところとか、フェラーリとファックするマルキナのエピソードをライナー(ハビエル・バルデム)が語るところとか、死体をドラム缶に詰めてバキュームカーの中に入れ、あっちこっちたらい回しにするという恐ろしく無意味で恐ろしく残虐な「遊び」とか、いろんなショット/エピソードが頭から離れなくなる。

あと、チーター柄のタトゥーをしてチーターを飼ってるマルキナのクレイジーっぷりは『タイガー・キング』を観た後だとより説得力と深みが増しますな笑

他にもペネロペ・クルスやブルーノ・ガンツ、ジョン・レグザイモなど名優たちをふんだんに贅沢に使い、圧倒的に美しい映像で見せるフィルム・ノワールの最高峰。これからもきっと何度も見返すと思う。
黒田隆憲

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