イロカワ

ルパン三世 GREEN vs REDのイロカワのレビュー・感想・評価

ルパン三世 GREEN vs RED(2008年製作の映画)
3.8
ルパン三世を利用して作られた、宮繁久監督の個人的で私小説的な自伝映画。
 自伝は言いすぎかもしれないけど、この映画のヤスオは完全に監督の実体験や個人的な感情が物凄く投影されたキャラクターになっている。若者特有の将来への不安や、自分の無力感。そういったものを乗り越えて自分のアイデンティティーを確立していく物語。
 一人の人間として一人前の存在になることを「ルパン三世になる」と表現する唯一無二の作品。非常に面白い作品だし、何回も見直してしまうけど、どうしても許せない点がある。主人公のヤスオが簡単に認められすぎ問題だ。ルパンの格好をして、ルパンぽい事をやりだすと、途端に要領が良くなって変装がめちゃくちゃ得意になってしまう。ヤスオみたいな人間は本当にダメダメで何一つ出来ない無力な人間であるべきだと思う。そういった人間が根性と努力で自分の壁を乗り越えて、人生と戦う物語が見たいし、監督もそういった物を作りたかった筈だ。
 押井守版ルパンも多分意識しているのだと思うけど、大して重要とは思えなかった。監督の半径5mで形作られたリアルな東京の街並みが物凄く心に残る。監督にとって大切な自分の人生の瞬間が克明に記録されている。どうしてこの話がルパンでなければならないかといえば、それは宮繁久監督がルパン三世を通じて一人前の大人になれたからに他ならない。その熱い気持ちをビンビンに感じるからこそ、嫌いになれない作品。
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