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マリリン・モンロー 瞳の中の秘密のLUXHのレビュー・感想・評価

3.4
最初の30分はとにかく美しく弾けるような魅力のマリリンに釘付け。本ドキュメンタリは野心家で華やかで天真爛漫なスターマリリンといったものではない。孤児で親戚の家を転々と最低限の命を繋ぐ様な環境だった、居場所がない、生活のために働かなくては、女優という夢を叶えたい、という女の子のストーリー。

性格はシャイで臆病で学歴の劣等感を持っていて自信がない。口を開けずに喋るような子だったとされる。進んで本を沢山読んではノートに書き込んでいるが、それは秀でたものを見つけるためではなく、"素養として大事な事"を鍵として自分に言い聞かせるようにしたためているように感じた。結果的に人体の仕組み的な本からモンローウォークの礎が出来るなど彼女独特の輝きも見られる。

女優の座を得るには要人と親密な関係にならなければならないが、躊躇ったとしても次の娘がその席に座るだけ(チャンスを見送り続けるのみ)と俯瞰的であり、それを除いても愛や男など無用と記していた彼女。生きるための合理的な考え方を幼少時代の彼女が支えていたともいえるが、その世界は鉄壁というわけではなかった。

大女優になればなるほど内面的な劣等感は強くなり、別格扱いされるほど怖くて楽屋から出てこれない。といった視点で語られている。そして自分自身の派手なルックスが役を限らせるとネガティヴに捉え、色気があって知性のない役ばかりであると気にしていた。ちゃんとしなくちゃ、と個人的なレッスンではなく、著名になってから無名の俳優の卵達が師に仰ぐアクターズスクールの生徒になり、白い目で見られるのを感じながらも熱心に先生から学ぼうとしていた。

マリリンが結婚した相手は、軽率に彼女を扱おうとしないが熱心な姿勢が見られる者、だった。頑なに思えた心も彼女特有の琴線に彼らが触れた事で簡単に(みえるけれども衝撃的に)揺れ動く。1人目とは別れたくなかったのが本音だし、特に2人目には見下されていた(と感じるノートや脚本の存在を知る)事の人間不信は計り知れないものがあった事だろう。

とにかく色々な彼女が劣等払拭と成長するために蒔いた努力の種、ささやかな愛、恩師の言葉を肝に銘じて演じ、生真面目な進路選択が少しずつがんじがらめに良くない方向へと進んでいってしまう。精神病棟への強制入院については必死の抵抗で6日で開放されるが、たったの1週間足らずと思ってしまうが、一所懸命生きてきた彼女が騙されて(移送される理由を伏せて)閉じ込められた・正常でないといったレッテルを貼られるのは認め難い現実であった事だろう。

幼少期の写真、囲み取材やアクション前、NGシーン、多くのフォト、直筆の文字や文章を観ることができる。後半に切り出されるシーンは本当に憔悴しきってしまっていて、とても辛そうである。勿論、監督キャストスタッフも辛そうである。

スタジオ悪や興行収入に見合わないエリザベステイラーとの収入の格差が描かれているが、なんともここは自分には鵜呑みにするのを計りかねる微妙なラインである。よくは理解していないがエリザベステイラーはキャリアが長く報酬が釣り上がるのはなんとなくそういう仕組みだったのかなとも思う。しかし、やはり役所の違いや育った環境の違いに目が行き、私は彼女の1/10人前なのだ、とはいかないまでも劣等感を強く持ち、スタジオお抱え女優の地位を捨てて、多様な役や一人前とみなされていると納得できるくらいの価値=報酬を得るということに執着したというのは納得いくようにアプローチされている映画だったと思う。

様々な女性がマリリンの言葉を朗読しているのに賛否あるが、事前に皆さんのレビューをチラ見していたので心構えができ、アリだったかな、と思えた。沢山の人が出ることでどのように見られてもマリリンの芯や、人望や羨望、女性が望む普遍的な生き方などが感じられる。しかし男の人の多くに対しては意図的な演出だと思うが大方の嫌悪感を感じたりもした。

まだまだ彼女の作品は見れていないが、やっぱり観たいなあと思った。お熱いのがお好きがとても好きだけれど本人は女装男子に気づかない愚かな主人公、という視点で気に入らなかったとある。確かにメイキングかなにかでもそんな伝承があった気がする。本ドキュメントを見たからこそいうけど、私にはシュガーはそう映らなかった。彼女が演じたからこそだね、とも言いたいけどそれはマリリンの役者魂を、ノーマジーンのコンプレックスを否定する言葉にもなってしまうので切ない。
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