ケロケロみん

事件のケロケロみんのレビュー・感想・評価

事件(1978年製作の映画)
4.5
19歳の少年が姉妹丼ry裁判モノのミステリーで原作は「野火」の著者大岡昇平。
厚木の相模川近くで女性死体が見つかった。本厚木駅近くのスナックのママハツ子だった。そして割り出された容疑者は磯子で工員をしている19歳の少年宏。彼はハツ子の死後横浜に移り妹ヨシ子と同棲してる上、ヨシ子は妊娠していた。あまりにもけしからん事件なので検察は厳しく追及する。少年宏、ハツ子、ヨシ子の中学の先生や弁護士は宏を何とか助けようと奔走する。裁判が進むにつれ意外な事実が明らかになる。

前半の裁判はずっと「神奈川県高座郡何とかーー」と住所ばかり唱えていて辛い。そこを辛抱すると、段々裁判ものらしい面白さが楽しめる。佐分利信の裁判長は語尾がいつも投げやりで辛そうで大丈夫かと心配になる。丹波哲郎がハッタリ上手な弁護士、森繁久彌も長後の金物屋のオヤジ役を軽妙に演じている。しかし結局は大竹しのぶの演技力に全てかかってたという印象。
役者の個性が強すぎて話がかすんだ。裁判の判事が会議室で判決を決定する場面は興味深い。
裁判という俎上に上げられた人々ははじめは自信を持って証言するが両サイドから問い詰められると次第にメッキがはがれ、ポロリと真実をもらす。または隠していた事実を隠しきれなくなる。人間は意図しなくても自分はいい人間と信じたいあまりに無意識に嘘をつくものだ。そんな心の不確かさを考慮しつつ、確証のある事実のみを元に判決を下す。量刑を課す重みがずしんと見るものの心に響く。

舞台が長後、本厚木、鶴巻温泉といった小田急沿線なので昔の神奈川県央の風景が楽しめた。しかし一箇所不満なのは渡瀬恒彦の演じるチンピラが長後に住んでいて裁判の後横浜駅から帰るとき、東海道線で藤沢に行き今とあまり代わり映えしない連絡通路を通り小田急にのり長後にいたるルートをとる。これは遠回りだし、運賃も高いと思う。横浜から長後に行くなら相鉄線で大和に行き、小田急に乗り換えて長後に行くのが良いと思います。最近は特急もできましたし。
でも一瞬我が母校のある平沼橋駅あたりが車窓にうつり、ちょっと嬉しかった。相鉄、中々映画にでないから…

渡瀬恒彦のアパートだとおもうけど、アルマイトのやかんの王道をいくやかんがでてきます。ヨシ子と母の家にはやかんの蓋らしきものかわうつるけど、全体を確認出来ませんでした。