りょっけ

LIFE!のりょっけのレビュー・感想・評価

LIFE!(2013年製作の映画)
5.0
展開の緩急の付け方の秀逸さがエグい。主人公ウォルターの心情の変化と物語の進行がピタリとハマって、一瞬も目が離せない。
監督が主演のベンスティラー本人だからこそのシンクロ率とも言えるかもしれないが、この世界観を作り上げる手腕は凄すぎる。

映像作品としての画面のインパクトにも強い。
まず序盤で掴みとしてウォルターの空想の中の派手だったりボケだったりな演出が繰り広げられるが、必要十分な時間の中でそれぞれのジャンルに必要な要素をしっかりおさえて作られているのが分かる。
そこから映像はどんどんと彼の現実世界での行動を映すようになるが、そこからは雄大な自然の中で奮闘する人間の様がリアルに描写されており、空想とは違った見応えがある。
大胆な行動は頭の中だけだったはずの彼の世界が、空想の域を超えた現実の行動によって変わっていく。空想の中ではウォルターは「完璧な主人公」だが、リアルではそんなに綺麗に物事は進まない。それでも、フィクションの映像よりも、圧倒的なリアルの中で必死になって行動する姿の方が胸に迫る映像になり、そして確実に彼を前に進める。
笑えるようなフィクションとそうしたリアルとの違いが、ウォルターの人生の中での大きな変化を綺麗に表現している。

特に火山の谷間をスケートボードで下るシーンがお気に入り。映像作品として、彼の心の勢いが大自然という目の前の現実を上手く乗りこなして前に進んでいる描写としてめちゃくちゃに爽快。

この映画は空想癖のある主人公ウォルターが人生(LIFE)の真髄(Quitessence)に近づく物語だが、登場する「真髄」という言葉の重みと比較して、セリフや言い回しは臭すぎずすんなりと入ってくる。
会社の中での現実的な一幕と非現実的な大自然の中での予測不能な行動が隣り合わせに進んでいく展開は、あくまでも日常の中にきっかけはあって、そこから自分だったらどう踏み出すかと考えさせられる。

物語の意図をサポートするセリフが所々に配置されていて、あまり迷わずに見ていられるのも個人的には好き。それでいて説教くさいわけでもない。映像としても物語としても一貫した想像のつきやすい展開が少ない作品なので、あらすじを思いついたとしても飽きさせず面白い映像にするのは至難の業だと思う。そこを映画として、一つの物語として綺麗にまとめ上げているところがすごい。

とにかく無駄なシーンがなく、時間があっという間に過ぎる作品。
コメディ要素や非現実要素と、リアルな人生の生き様が綺麗に融合した展開が見事。
映像と物語がセットになって相乗効果を生み出しているところがとても好き。映画ならではの満足感を十二分に味わえる。
自分の人生の真髄を考える良いきっかけとなった。一生を通して何度も見たい作品。
最高!!
りょっけ

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