クリストフォルー

渇き。のクリストフォルーのレビュー・感想・評価

渇き。(2013年製作の映画)
4.5
少し前の緒形拳や仲代達矢がそうだったように、いま、日本映画・ドラマ界の頂点に立つ俳優といえば、やはり役所広司だろう。もちろん、渡辺謙、佐藤浩市、中井貴一らもいるが、役所は『彼がいなかったら、日本のエンタメはどうなっていたのだろう?』と思わせる俳優だ。彼が出演した映画やドラマの多くは、彼無しでは成立しなかった作品だと思える。本作も、間違いなくそのひとつだ。
韓国映画ばりに悪態を吐き続ける主人公の、どんなに無様な様を見せられても、結局目が離せない。こんなキャラクターが成立するのも役所広司ならでは。
また、いつも感心させられるのが、新人や初めて共演する俳優でも、見事にその相手役になり切れてしまう懐の深さだ。どんな新人も新人に見えなくしてしまう彼の力量は、どれほど多くの作品を援けたことだろう。
中島哲也のマジカルな演出さえ、役所広司のためにあったと思えるくらい、変幻自在に『嫌われ昭和』を演じて見せてくれた。もはや、残すは韓国映画進出かな。

公開から数年を経て、撮影当時に、監督、プロデューサーから望まぬ露出を強要されたと、共演していた女優が告発した。映画の中では数秒のシーンであっても、撮影された当人にとっては、精神的ダメージが残り、その後の人生を歪めることになったという。
性加害の告発、ジェンダーギャップの解消、インティマシー・コーディネーターの導入など、すこしづつ変化の兆しはあるものの、見たい映画が安心して観られる状況を、マスクを外した後も、観客の側からも求めてゆきたい。
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