スキピオ

愛の渦のスキピオのレビュー・感想・評価

愛の渦(2013年製作の映画)
4.0
"あそこにいた私は、私ではないから"

裏風俗が題材なのがまず目につくけど、意外にもちゃんと賞を取った舞台劇が原作。それゆえ低予算感のある密室空間が舞台でありながら、会話や間の取り方や全体の雰囲気が絶妙、撮影も綺麗で見応えがあった。

取材をしっかりしているのか訳ありな登場キャラクター達の描き分けもしっかりしていて話が分かりやすいし、あとやる気のないスタッフに、参加メンバー同士の最初のぎこちない会話など「こういうところに行くとこういう感じだろうな」っていうのがリアルで面白かった。

また小規模感はありながら新井浩文、滝藤賢一はじめ出演俳優が豪華。なかでも池松壮亮のニート青年の生気のない表情の表現はさすがだし、そして何よりヒロイン、門脇麦の若手女優らしからぬ出し惜しみの無さには少しの心配もありつつ感服した。

ただ「自分らしさとは」的なテーマに繋げるにはやや描写不足なのが惜しいと思うけど、総じて満足、いい邦画でした。