にいにい

愛の渦のにいにいのレビュー・感想・評価

愛の渦(2013年製作の映画)
3.5
残高2万円のATMを見つめる青年。迷いながらも結局お金を降ろしてしまうその姿。セックスに幻想を抱き、独りよがりの愛情を感じる。「これ吸い終わってからでいい?」というプロ感に萎え、事後の虚無感に苦しむ。何これ?過去の傷をどんどん抉ってくるんですけど…

乱交パーティという響きから想像するものとはちょっと違う。色々細かいルールがあるし、別に3Pとかする訳でもない。思いっきりエロに振り切った映画化と思いきや、振り切れてるのは門脇麦ちゃんだけじゃん。そこのところ、期待しすぎてしまった。

ただ、本作でそもそも描こうとしているのがそこじゃない。エロ目的で観るならAV観ろって話で。人間、上っ面の皮を剥がして剥がして剥がしきった最後に残るものは欲望なのだろうか。セックスが目的で集まった8人の男女、現代社会を生きる上では早々お目にかかれないシチュエーション。そんな中でも体面や常識といった仮面が欲望を邪魔する。お互いやりたい事は1つのはずなのに互いの腹を探るような気まずい会話。まるで自分もその場にいるかのような気まずい感覚。思い返せばここが1番面白かったかも。

童貞がセックスは特別なものだと思っていたが、実際やってみるとそんなことなかったと語っていたが確かにそんなもんだ。窪塚君もここにはそんな特別な人間なんていないって言ってたが裸になれば人間皆同じか。しかし、ただ1人、自らの欲望を満たす目的で集まったこの一晩の幻夢に幻想を抱いてしまった男がいる。池松君演じるニートである。

参加者が徐々に自分をさらけ出す中、体育座りでガードを固める彼。同じように静かに俯いた門脇麦演じる女子大生にシンパシーを覚える。そんな中、彼女と体を交えることとなる。身体の繋がりによって精神の繋がりを感じる。そして非日常の先の日常にも彼女を求めてしまう。ただそれは彼の独りよがりな感情であった。朝のガラガラな電車を一人どうしようもない日常へと帰っていく彼、車内に差し込む朝日は暖かく彼を包み込んでいたが、どうしても苦々しさが消えない。過去の自分と重なって見えちゃうもん。

セックスは人間である以上、切っては切り離せないものである。それ故に色々個人的な経験と照らし合わせて考えてしまったけど、基本的にはエンタメ映画だと思う。笑い所は多いし、キャスティングも良い。ただ、ちょっと主役の2人がコミュ障すぎてテンポが悪いのと尺が長いのが気になった。観終わった後は賢者モードも通り越して、何もかもがどうでもよくなり清々しささえ感じる、一種の開き直りだがそんな感覚になった(目覚めてまた後悔するんだけどね)

※OPのタイトルズバーン!!!が超かっこよかったです!!!
にいにい

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