かたゆき

ディス/コネクトのかたゆきのレビュー・感想・評価

ディス/コネクト(2012年製作の映画)
4.0
「ハイ、ベン、はじめまして。あたしの名は、ジェシカ。あたし、あなたの歌が好き。本当に感動的な歌だわ。あたしにも一曲作ってほしいなって今回、友達申請したの……」
地味で大人しい音楽オタクの高校生、ベン。
ある日、彼はフェイスブックでそんなジェシカと名乗る女の子からのメッセージを受け、友達となるのだった。
だが、彼は知らなかった。それは同級生である男の子のたちの悪い悪戯であることを。
次第にエスカレートする“ジェシカ”の要求にのぼせ上がってゆくベン。
彼が、自らのヌード写真をジェシカに送信したとき、それは取り返しの付かない悲劇へと転がり込んでゆくのだった。
さらにはそこに、ネット詐欺に騙されて全財産を失ってしまった夫婦や、児童ポルノサイトでリアルタイムで自らの身体を晒す少年少女たちが複雑に絡まり合い、物語は更なる悲劇へと繋がってゆく……。
ネット社会に潜む危険な落とし穴に落ちてしまった人々の悲劇の連鎖を、淡々と描いた哀切な群像劇。

ほとんど予備知識もないままにこの度鑑賞したのですが、これが予想外に良い映画で僕はびっくりさせられてしまいました。
何が良かったかって、とにかくこの抜群の構成力!!
かなり複雑な構造のお話で、しかも登場人物もやたらと多いのに最後まで分かりやすく、かつ緊張感を一切途切れさせずに見せきるこの監督の手腕は相当なものだと思います。
のみならず、映像や音楽も随所にセンスを感じさせ、その完成度の高さには素直に驚嘆させられました。

物語の方も、人間の悪意や欲望が簡単に暴走してしまうというネット社会が孕む危うさを極めて冷徹に見つめたその視線の鋭さには、久々にガツンと頭を叩かれるほどの衝撃がありました。
ネットとは便利な反面、人間をさらに愚かで残酷な生き物へと簡単に変貌させてしまう危険な側面も持っている…。
登場人物たちが翻弄される、所々目を背けたくなる程のそんな理不尽な現実に観れば観るほど気が滅入ってくるのですが、最後、それでも必死に生きていこうとする彼らに僕は微かな希望を見出さずにはいられません。

ネットというパンドラの箱を開けてしまった僕らは、もう二度と閉じることはできない。
リベンジポルノやSNS炎上、ネットを発端とする未成年者による犯罪行為…。
そんなますます生き辛さを増す現代のネット社会において、本作こそ真に観るべき映画の一つと言っていい。
かたゆき

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