Ninico

ベルリン コーリング(原題)のNinicoのレビュー・感想・評価

3.3
ベルリンのテクノ産業とクラブシーンはそのうち文化遺産に登録されてもおかしくないほど、唯一無二なものであると私は思う。
DJとオーディエンスの双方からのダンスミュージックに対するストイックな情熱によってベルリンのクラブシーンは形作られてきた。一方で、ダンスミュージックがドラッグやそのあたりのビジネスと切り離せない密接な関係にあることに対して寛容であり続けたことも、ベルリンのクラブシーンが特別である大きな理由のひとつである。

この映画は、そんなベルリンの街のスターDJイカルスの個人的な成長の物語であり、一般的なクラブカルチャーのドキュメンタリータッチの映画とは少し毛色が違うものである。
しかし主演は実際にベルリンで活動する実在のDJであり、ベルリンの現状を具体的に描写しようとしている映画といえる。現実のクラブ音楽と薬物の関係を(しがらみと表現した方が良いかもしれない)
音楽か薬物か?
フロアか人生か?
というテーマと向き合って、紐解くような意味合いを持った作品という印象が強い。

想像を絶するパーティー依存的な人々と状況が、間違いなくベルリンには存在する。そしてその魅力と磁場はクラブ好きを確実に取り込む強力なものである。

だからこそベルリンは危うく、特別であり、この映画はリアルで意味深い作品である。

イカルスはジャンキーとなり統合失調症を発症し精神病院に入院するほどの目にあうまで、テクノとクラブが人生全てという状況の危うさについて考慮しなかったようであるが…。

非ジャンキーのテクノ好き/ベルリン好きとしては好感の持てるラストといえた。

全体的にドイツ人らしい生真面目で丁寧な、説明的といえる描写が多く、わかりやすすぎる展開が続く感は否めないが、現代のテクノやクラブのシーンに造詣の深い方には思い切り共感できるシーンが多数。

ベルリンで最も愛されてきたBar25も印象的なシーンで登場する。
音楽は好みの分かれるところ。ベルグハインやトレゾアのような直球地下テクノ好きには若干合わないかもしれない。
Ninico

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