かぎろい

ウルフ・オブ・ウォールストリートのかぎろいのレビュー・感想・評価

4.6
わき出るお金がファックとドラッグという無限の「狂喜(狂気)」にひたすら変換されていくというお話です。
実在した株式ブローカーの伝記が原作ですが社会派映画ではありません。ファックとドラッグ、オーガズムです。観ていたらこちらも興奮してファック!ファック!と言いたくなります。異性と一緒に観たらきっとファックしたくなります。
女性のおっぱいとディカプリオのお尻がいっぱい出てきます。


ディカプリオの狂気はずっと好きでした。初期の『ギルバート・グレイブ』『バスケットボール・ダイアリーズ』『太陽と月に背いて』と続く彼のガラス細工のような容姿と、同様にもろくて鋭い、若さと才能に裏打ちされた狂気が。
年を経て彼の顔にも相応のシワが増え、ふてぶてしさが出てきてもその繊細さは失われずに、仕事を持つ男として、家族を持つ夫として、その時々に生み出される狂気が、未だに彼を突き動かしている。

もっとも今作のディカプリオの演技は近作の『ジャンゴ』や『アビエイター』がより凄味が足りなく感じました。
狂気の中にある、悲しみのエッセンスがうすい。ブローカーの男のもつ「弱さ」が描かれていない。そこがストーリーの単調さにもつながっている。ひたすら彼の一本調子の“気の強さ”だけが描かれていて、それは家族喪失といったシーンなどで表現されようとしていましたが、彼にとって家族よりも会社(仕事仲間)のほうが大事なのだからそれもあまり効果がなかったですね。

そもそも(新しい若い)奥さんだって彼のことをあっさり捨てるしね。
ラスト近く、彼が奥さんに「自分は捕まるかもしれないけどお前は大丈夫だから」という言葉をかけたらあっさり「当然よ」と言われてました。
男は「仲間や会社のため」っていうけれど、女性にとってそれは「わたし以外」のことだから、けっきょくは「男の自分勝手な行動」ということになってしまう。男にとって仕事を頑張るということは家族への、妻への愛とつながっているけれど女性にとってそれはそれ、これはこれなんだということをこの映画で初めて実感いたしましたとさ。



で、映画の魅力の一つに「夢を見させてくれる」というのがあります。ディカプリオが何度もこの狂乱の夢からさめそうになっても、そのつど彼はそこにしがみついて離れようとしませんでした。猛烈なスピードで物語の奔流にさらされた者は現実に突き落とされ、反省し、人生を見つめなおし、これまでの生活を悔い改めるというのが一般的な「リアルで深みのある映画」なはずです。
だがこの映画はそうではありません。最後まで彼は夢を見続ける。物語としての落ち着きどころは失われたけれど、それが彼の人生だから。当然観客を納得させるために彼の人生があるわけでもない。

そしてこれほどの、現実をぶち壊してくれるほどの夢でなければ現実は変えられないということなのでしょう。


帰り道、道行く人たちの顔が、そこをさまよう自分が、たまらなくつまらない存在に思えた。
かぎろい

かぎろい