ぐっち

楽隊のうさぎのぐっちのレビュー・感想・評価

楽隊のうさぎ(2013年製作の映画)
3.8
映画としてどうこうというわけではない。特段見どころが多い映画というわけではない。

でも何なんだろう、この通り抜けていく爽やかな気分は。

部活選択という試練、楽器経験なんて無いのに何故か部室に来てしまう偶然と必然が重なり合うような感覚、仮入部のうちに取り込まれていく先輩たちの巧妙な手口、先輩たちみたいに旋律を奏でてみたいという憧れ、初めての合奏、男女仲良く下校する感じ、喜びと挫折を繰り返しながら、そして先輩になっていく…成長の過程。

私も吹奏楽部出身者ですが、忠実に再現された吹奏楽部考察には大満足です。本当によく出来ている。

また一方で、青春を挫折した子との関係性をしっかりと描いているところが感心。部活をするってまさに未知との遭遇なわけで、進学や就職などにも通ずる初めての人生選択のようなもの。未知の集団に飛び込むことは言い知れぬ不安と緊張感が付き物なのだから。もちろん部活だけが青春時代の全てではないわけで。世の中と一緒で成功者だけの世界はない。

生きるって難しいこと、ただ吹奏楽部出身者が、懐かしいと豪語しながら手放して喜ぶだけではないところが本作の魅力であり奥行だと思う。

もう決して後戻りができない過去を思い返し、想起させてくれる、大人にとってはファンタジーなんだ。これは良作。
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