Machiko

再会の街でのMachikoのレビュー・感想・評価

再会の街で(2007年製作の映画)
5.0
大事な人を亡くした傷は簡単に癒えないし、癒せるもんでもない。癒さなくていいし、癒してあげようとする必要もない。それをキチッと描いてくれたのがよかった。
テロはじめ、事故なり事件なり災害なり病なり……人が大きな喪失から立ち直っていく話ってこの世には無数にあって、もちろんそれは尊いし、「テロに屈しない」っていうメッセージにもなるし、共感も誘うんだけど、でもそれは世の中に確実に沢山いるであろう、未だ立ち直れずにいる人達に対して誠実なのか、その人たちを無視して勝手に前向いてないか、っていう気持が自分のなかにずっとあった。だから本作を観てすごくしっくりくるものがあった。
本作で、チャーリーはわかりやすい「立ち直り」だったり「喪失からの再生」はみせていない。義両親とは一応の和解を見せたし、入院も回避できたけど、それだけ。閉ざしていた心は少しだけ開かれたけど、彼はきっとこれからも、道行く人たちを今は亡き家族と見間違えながら生きていく。友人であるアランにできるのは、だから、疎かにしていた自分の家族とちゃんと向き合って、光の方向へ走っていくことだけ。まず自分の一歩を進めることだけなのだ。
そこの「わきまえてる」ところというか、キャラクターを簡単に救ってみせないところが、苦しいし無力な気分にもなるけど、人間の感情を軽視してなくてよかった。だって実際に居るでしょ多分。20年経っても立ち直れてない人って。周りがどれだけ気を回しても前を向けれてない人、絶対居るでしょ。そういう人たちを無視してないのが好き。そういう人たちにスポットを当てたのが好き。誠実だと思う。また、そうしたことで、テロというものがいかに残忍で罪深いものであるか、っていうのを提示しているのもこの作品の力だなと。観てよかった。大切な人を失う傷は簡単に癒えないから、だからどうかこれ以上、新たな涙が流れるような事件だったり、情勢の変化だったりが起こらないことを心から願う。
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