Edmond

her/世界でひとつの彼女のEdmondのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
4.1
個人的にスパイクジョーンズ監督の印象を少し変えてくれた作品。
スパイクジョーンズ監督作はいつも中盤から終盤にかけて良い意味でも悪い意味でも置いてけぼりにされてしまうのだけど、今作は最後までついて行けた。(こう書くと悪意が目立ちますが、とても好きな監督です。)
別れた妻との甘い記憶、久々の再開での淡い期待、そして根底にある二人の間に深く刻まれた決定的な溝などが、映像、インサートの入れ方、セリフや演技で実に見事に表現されていて、この監督は離婚歴があったっけ?とググってみると、映画監督ソフィア・コッポラと離婚していた。「同業者との離婚」という監督のエピソードから想像するに、劇中の「幼なじみとの離婚」となんとなく近しい部分が伺い知れた。
ここからは勝手な私見になるのだが、この作品はAIとの恋愛なんてものは実はただのスパイスというかメタファーでしか無く、監督自身の離婚によって受けた傷を表現したかったのでは無かろうか。
次第に明かされる離婚の事実、AIとの会話も次第に離婚の核心へと迫り、妻との再開シーンは実に美しく、かつ残酷に描かれている。
そして離婚の傷を埋めるように現れる女性たちも、いきなり結婚を迫ってくる女性、自分の理想像そのままだけど架空の女性。この対比すら現実と理想のギャップを表現しているように捉えられる。
妻に「現実を見ていない」と言われ、現実と向き合おうと努力するも、理想を捨てきれず、最後には理想にも捨てられ、やっと気付いた事。
ラストシーンに置いてけぼりをくらった方も多いかと思うけれど、きっと最後のあの言葉こそが監督が伝えたかった、ただ一つのメッセージなのでは無かろうか。

…と、言う事は…今まで置いてけぼりをくらっていたスパイクジョーンズ監督作品は、実は全て監督の経験を元に作られていたのでは?だからこそ「マルコヴィッチの穴」や「かいじゅうたちのいるところ」を理解するのは、常人には到底不可能だったのだ!(過去作は脚本が別の人なんですけどね!今作が初めてのスパイクジョーンズ単独脚本作みたいです。)

最後は冗談じみてしまいましたが、見る価値はありだと思います。なぜって、ルーニー・マーラの美しさ(当初、キャリー・マリガンがキャスティングされていたらしいけど、そんな事されたら美しすぎて残酷すぎて死んでしまうと思います!)そしてポーシャ・ダブルデイのエロ可愛さがハンパ無いんだから!
Edmond

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