よどるふ

物語る私たちのよどるふのレビュー・感想・評価

物語る私たち(2012年製作の映画)
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劇映画だった前2作(『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』、『テイク・ディス・ワルツ』)に続いてサラ・ポーリー監督が世に放ったのは、自身の出生にまつわるドキュメンタリー作品である。いま“作品”と書いたが、本作が“作品”になるまでには、さまざまな人物のさまざまな思いが交錯したであろうことが容易に推察される。

そういった作り手(やその他の関係者)の“逡巡”そのものが作品にに刻印されているのが見える一方で、全体に漂う雰囲気は重すぎることはなく、エンドクレジットが始まる直前に至っては、何とも言えないユーモアを飛ばしてみせている。タイミングが上手い。

本作は、関係者たちのインタビューを単純に並べるだけではなく、本作で取り扱われている出来事の当事者自身が、その出来事に登場する自分のことを“彼”と呼んで、第三者的な立場として“自分”を語る機会をも与えている。“あの人”の自己セラピーとしても本作は機能しているのだと思う。
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