私たちは、ドキュメンタリーフィルムやフィクションとして作られた映画やドラマを通して、人の人生を垣間見たり、想像するとで、ワクワクしたり感動したりするものである。
しかし、本当は、自分自身の人生こそが、一番身近で最大のドラマであり、何にも代えがたい輝きを放つものである。
本作をみながら、そんな事を考えた。
監督でもあり女優でもあるサラ・ポーリーが自身の出生の秘密を追ったドキュメンタリー映画。自身が11歳のときにこの世を去った母親ダイアンの本当の姿を浮き上がらせるため、関係者や家族のインタビューで綴る。サラ、父親、母親、兄弟それぞれの立場から見える『真実』の違いを描き出した秀逸なドキュメンタリー作品。
恐らく、ドキュメンタリー映画だと言われなければ、普通のフィクション映画かと思うような綺麗な仕上がりになっている。ドキュメンタリー映画としては、非常にスマート!
しかし、途中途中ではさまる、古い8mm映像に登場する人物をみると、明らかに登場人物の過去映像であることが確認できるし、登場人物が役者だとすると、あまりにも演技が旨すぎるので、「やはり、ドキュメンタリーか」と納得する。
でも、ドキュメンタリー映画という枠を越えたクオリティを感じさせるし、これを綴った、サラ・ポーリーの才能を深く感じてしまう。
全編通して、サラの家族のインタビューと、古い8mm映像で構成されているため、ひたすら家族の回顧録を淡々と魅せつけられる感じがしてしまう。
しかし、映画冒頭とラスト周辺で、この映画が伝えたかった事を、ナレーションでまとめられている所が、本作の親切なところ。
その意味を噛み締めながらみると、最後はじんわり涙がでてしまった。
私たちには、一つひとつ物語を紡いでいる。
人生という長い物語の真実は一つだけれど、色んな角度からみると、それぞれの立場で複数の真実が見え隠れする。
いつか、それらを知ることで、より深く自分自身を知ることができるのかもしれない。傷付く事もあるかもしれないが、生きている理由も見えるかもしれない。
それは、それで有意義である。