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インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌の3Dメガネのレビュー・感想・評価

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『インサイドルーウィンデイヴィス
名もなき男の歌』
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【フォークソングに惹かれて】
家がなく、他人の家に泊まりながら
生き長らえている売れないミュージシャンの話。
自分が望む音楽が他者の心に届かない。
お金が無くとも、プライドを傷つけながらも
迎合するよりはマシだと曲げられない。
だけど売れない現実は変わらない。
だが彼は自分の力では生きていけない。
住む場所を提供してくれているのは他人。
音楽を聴いてくれるのも他人である。
度々関わる人達と揉め事を起こしてしまうが、
最終的に彼は許される。
自己実現の為に他者迎合しない男が、
他者の許しなしでは生きていけない現実。
ただ、助けてくれるのは彼の音楽に惹かれ人達である。
離れては戻って行くのは
何かに惹かれているから。
挫折した彼は、一度諦めかけるも最終的にフォークソングに戻る。
彼はフォークソングに惹かれているから。
離れては戻り、過ごして行く。
そんな1週間を切り取ったお話。
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【表現】
本作では1週間の中で起きた様々な葛藤、回帰現象を描いていきます。
音楽と金銭との葛藤。親友の歌を歌うのか?自分に才能はあるのか?
音楽をやめるべきか?
そして持ち主へと戻る猫を始めとする
回帰現象。
ルーウィンも最後にはフォークソングに回帰します。
この回帰と葛藤こそ人生そのものではないでしょうか。
紆余曲折したり、精神世界で何度も自己問答したり
やがて来る明日は待ってはくれず、
生きて行くのが我々人間です。
そんな人生の中で、回帰する場所というのは
自分の好きな物や、安心できる人間関係です。
その中に自分のルーツ、生き様があると思うのです。
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【評価】
かなり好きな作品となりました。
元々ゆったりした時間の中で描かれる日常及び会話劇は好きです。
その時間の流れと絶妙にマッチするのが
フォークソングとオスカーアイザック。
素晴らしい歌声とギターの音色。
更に群青色の画面色調と相待って、
心地の良い映画体験を生んでくれています。
多くを語らず、出来事で語る部分も映画的。
仕事に疲れた夜にぴったりの1本です。
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