にいにい

あなたを抱きしめる日までのにいにいのレビュー・感想・評価

あなたを抱きしめる日まで(2013年製作の映画)
3.5
10代で未婚のまま妊娠したフィロミナ。修道院に入れられ子供を取り上げられ更には養子に出されてしまう。それ以来二度と会うこともなく老人となったフィロミナが再起を図るジャーナリストと手を組み、愛する息子を探す旅に出る。

婚前妊娠に人身売買、描き方次第では幾分も暗く重たく描けるテーマだが本作は予想に反してウィットに富んだ軽妙なタッチだった。それを成り立たせたのは何と言っても主人公フィロミナを演じたジュディ・デンチとジャーナリスト役のスティーヴ・クーガンだった。おばちゃんという存在は国境を超えても同じなのか、行動を共にしたらうんざりしそうだが傍から見るぶんには面白い。自分ではインテリと信じているジャーナリストととの掛け合いが素晴らしかった。旅を共にするにつれて、お互いのことを理解していく、意外にもちゃんとロードムービーとしても成立していたところも良かった。

本作では愛する息子がどうなったかという真相は意外にもあっさりと明かされる。というのもこの映画で描きたかったのはそこじゃなくて、その事実を知った上でフィロミナが選択する行動である。罪の赦しというキリスト教の理念、無信教徒な自分としては想像も出来ない境地である。カトリックとして、そして1人の母としてフィロミナが取った行動は慈愛と美しさに溢れているように見えたが自分には死んでも理解出来ないだろうなと思った。これはもう自分の宗教観、人生観に関わることだからどうしようもない。

予告やら邦題から想起させるお涙頂戴映画では決してなく、赦しというテーマを描いた良作ではある、映画としては良かった。
にいにい

にいにい