名も無き辛口評論家

47RONINの名も無き辛口評論家のネタバレレビュー・内容・結末

47RONIN(2013年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

「47RONIN」

日本では年末恒例の「四十七士」こと赤穂浪士討ち入りの特番が12月か1月に放送される。主君の仇討ちを果たすが切腹という誉れで浪人となるも武士として死ねる名誉と忠義に日本の美徳がある。
さて、この「47RONIN」だが、赤穂浪士討ち入りの四十七士と思って観ると評価を下げざるを得ない作品となっている。しかし、別のアクション活殺劇ファンタジーで同姓同名が登場する作品だと思って観れば、「それなり」の作品と思える。くれぐれも、赤穂浪士と思って観ないことを推奨する。また、赤西仁のハリウッドデビュー作品。柴咲コウが美しかった。ただ、最後まで通して古代中国のような広大な日本と地域など自分の知る兵庫県の明石や近畿地区を想定すると危険。重ねて言うが、別作品だと思って観るべきだ。さらに、徳川幕府と皇室を混ぜたような展開には異論を唱えなければならない。

日本人の閉鎖性と民族性を見事に描く

主人公は、ハーフなので差別されて忌み嫌われる。日本人の閉鎖性を露わにしているが、後半では主人公が同じ武士として同じ志を持つ忠義の人となったとき、そこには差別や別け隔てなどしない日本人特性を極めて上手く描いている。最後の切腹シーンでも天狗、鬼、ハーフ、獣と言われた主人公が、人として忠臣の武士として誉れの切腹で果てる。
また、報われぬ恋。柴咲コウ演じる浅野の娘との恋は結ばれることない儚いものとなる。今世は悲運の定めなので生まれ変わっても何度も巡り会うと誓うなど仏教の輪廻転生価値観を描く。

世界観が混沌としている

主君切腹後、無条件降伏を選択する。新たな主君となった浅野忠信演じる吉良上野介により1年間幽閉された大石内蔵助が、キアヌ演じる魁(カイ)に会いに行く。御前試合で武士ではないのに鎧を纏ったカイは裁き後、出島のオランダ船に売られてしまい、古代ローマの剣闘士のような日々を過ごしていた。
もうこの展開が無茶苦茶。菊地凛子の演じる狐と妖術が異常なのだが、ベトナムのハロン湾のような長崎出島に驚きを禁じ得ない。そこでパイレーツオブカリビアンなオランダ人と戦い潜り抜ける。ここだけは、どう考えても、別映画だと思った方がいい。しかも、剣闘士と戦っているカイについて至るほどの話はない。
また、他の山賊のようになった浪人と指輪物語のような湖と森で合流して、武器を得て反撃をすると言う展開であるが、真言宗なのか比叡山なのか分からないし天狗で武器を持つ宗教集団ということなので京都の延暦寺と比叡山と天台宗を想定するが、完全にSF映画に出てくる蜥蜴の怪物だった。ここだけスターウォーズかと思うが、武器を得て反撃に出る。地面に刺さった刀はアーサー王物語だろうか?キアヌの名作マトリックスが繰り広げられる。
そういえば、最初のシーンの捧げ物で狩っていた化物は、もののけ姫だろうか?あんなの森にいたら自分は実家の山林所有権を放棄する。それからリアルモンスターハンターとして牧場を開く。

反撃に出るが奇襲作戦がイメージと異なる

ここで自分は最大のミスを侵してしまった。幼少期から見慣れていた四十七士と赤穂浪士討ち入りをイメージしていたが、全く違う奇襲作戦でしかも失敗して無残に敗北して謎の登場人物の芭蕉が討死にする。
そこで結束は固まり、カイに抱いていた差別心も消える。全ての浪人が一致団結して血判書に名前を書く。これは連座制であり、ここに名前が載ることで討ち入り後に死罪が待っている。カイは魁と血判署名して仲間となる。
念入りな奇襲作戦を練る。吉良の城に忍び込み、祝言の祝いの舞に扮して襲撃する。しかし、すんでのところで太刀は吉良に届かないが、この奇襲は成功する。

手に汗握るファンタジーアクション

もうこれはトムクルーズのラストサムライの比ではない。菊地凛子扮する狐が、龍に化けるのだ。ここに来てロードオブザリングやその他ファンタジーアクション作品に変わる。龍を相手にキアヌが刀を振る。龍が暴れて石灯篭が飛んでくるが、キアヌが弾き落としたり、叩き斬る。流石、天狗ないし天台宗ヨーダ仕込みのジェダイは違う。自分は石灯篭を叩き斬る作品は、るろうに剣心というジャンプギャグ漫画しか知らないが、ハリウッド作品ではリアルに描かれる。最後、マトリックスして龍を殺して終わる。一方、真田広之演じる大石蔵之介が主君の仇である吉良の首を斬り落として勝負が着く。

上様の神裁き

無事、仇討ちを果たした47RONINには、涙を流して喜ぶ武士の誉れ切腹の死が待っている。普通、諸外国では君主による恩赦が出るだろうが、究極の法治主義と徳治主義を重んじる我が国日本では違う。武士の誉れである名誉の切腹が待っているのだ。切腹で果てられることに喜ぶシーンを見て海外では、さぞ狂気に震えるだろう。もちろん、そこには忌み嫌われてきたハーフの魁も人として武士として名誉の最期を迎える。
切腹の直前、上様が、止める。キアヌは動揺する。(「もしかすれば恩赦かもしれない」)など思ったに違いない。しかし、現実は過酷だ。忠義を果たした大石蔵之介の血を絶やすのは忍びないと上様は謎の恩情を出したので、作中で大した活躍をしていない大石主税を演じる赤西仁がイケメン枠で血の保存から切腹を逃れる。抜ける赤西をキョロキョロ観るキアヌ。もしかして自分も助かると思ったのかもしれない。その後、無慈悲な切腹で47人は義人として果てた。
最後に、柴咲コウ演じる姫が、古代中国のような場所で水田地帯に突き刺さる五重の塔、川に突き刺さった厳島神社のような鳥居を背景に魁の死を悼んで終わる。

感想として

最初から謎の映画だった。最後の最後に一言だけ言わせてください。間違っても、これを赤穂浪士の四十七士討入りと思って観ないこと。