かたゆき

ザ・イーストのかたゆきのレビュー・感想・評価

ザ・イースト(2013年製作の映画)
4.0
「我々は“ザ・イースト”。お前たちは自分の利益を守るために見知らぬ土地を汚染した。そこに住む人々や動物たちがどれほどの被害を被るかを分かっていながら…。犯した罪から逃れることは出来ない。大企業のCEOたち、我々はお前たちの住所を知っている。罪を犯した者には同じ恐怖を味わわせてやる。環境を破壊すれば、お前の土地も破壊する。我々はザ・イースト。そう、これは始まりに過ぎない」――。
罪を犯した大企業に報復のテロ活動を行う過激な環境保護団体、ザ・イースト。
民間企業に工作員として採用された元FBI捜査官サラは、そんな非合法組織へと潜入捜査を開始する。
恋人との平穏な生活も犠牲にして、そんな独自の信念を持つ彼らとの共同生活へとどっぷりと浸っていくサラ。
だが、彼らの主張へと耳を傾けていくうちに、次第に彼女のこれまで信じてきた価値観が揺らぎ始めていくのだった……。

とにかく、この作品の最後まで途切れることなく続く息が詰まるような緊張感には圧倒されました。
監督の程よく抑制の利いた演出力はもう完成の域に達しており、特にこのテロリストのメンバーたちのそれぞれの個性や魅力をきちんと描き分けているところなどなかなかのもの。
社会正義から出発した彼らが、いつしかカルト宗教まがいの怪しい儀式に拘ったり食料調達のためにごみ漁りするところなど彼らの狂信性を自然に炙りだしていて巧い!
テロを行う前に流される曲が荘厳なピアノソナタなのも、単なるエンタメ映画に終わらせないという監督の知性が感じられますね。
物語の終盤、彼らの本当の目的が明かされる驚きの展開にも見事に騙されてしまいました。

そして、本作が何より優れているのは、大企業にもこの環境保護団体にもどちらにも肩入れしないその極めてストイックな姿勢でしょう。
双方の主張もそして各々が抱える問題点も徹底的に透徹した目で描くことで、観客に問題提起して終わるというこの印象的なラストには久し振りにガツンとやられました。
本作で主役を演じた女優さんは共同脚本としても名を連ねているのですね。
うん、久々に美貌と知性と演技力を兼ね備えた、将来が楽しみな才能に出会えたように思います。
かたゆき

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