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ブルージャスミンのmmkのネタバレレビュー・内容・結末

ブルージャスミン(2013年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

100分以内でコンパクトにまとまっているが、中身はとんでもなく詰まっててテンポの良いプロットと皮肉なユーモアとともにスルスルと楽しめる。
ウッディアレン作品は久しぶりだった。ユーモアが効いててお洒落なのだけど、なかなかブラックで大概の主人公は散々踊らされた後に現実見とけやこんにゃろーと見放されて終わる。なので最近はあまり気軽にはなかなか見る気にならないです笑
そこから救いを見出せる終わり方をしてくれる作品もあるのだけど、今回はダメでしたねー。救えないくらい愚かな主人公だったもの。彼の作品の登場人物皆それぞれ愚かな一面はあるけど、救える部分は持ち合わせている。誠実さとか真心とか賢さとか生きていくための知恵とか。残念ながらジャスミンはどれも持ち合わせてなかったですね。

他のウッディアレン作品にも、見受けられるメッセージだけど、虚構と現実は表裏一体で現実は決して変えられない。少なくとも虚構で現実は変えられない。
それこそハルが他人の金を騙して膨らませていた富もあぶく銭という名の虚構だった。他のセレブ達とジャスミンが違うのは虚構を虚構と分かって享受してたのを、ジャスミンは例えるなら都合の良いお伽話をいつまでも本当だと信じて疑わなかったおめでたい痛いコだったんですね。ハルが浮気してたのに気づいてても黙ってたのは、サンタクロースがいないと分かってるけど信じてる人には本当の事を言わないというのと同じです。
しかしいつまでもお伽話の中では生きていけないんです。ハルの塗り固めた嘘八百を悟ったジャスミンは子供が自分の大事にしてた宝物を突然自分で壊しちゃうかのように全てをぶち壊す。膨らみ切った虚構が破裂した瞬間です。
ウッディアレンは無駄にプライドの高いインテリぶったおバカさんをブラックジョークで彩るのが大好物なようですね。アニーホールでも散々な言い様だったのを思い出しました。ホームレス真っ逆さまになってもあの女はずっとあのまんまだろうねと画面を通してウッディアレンがスタンディングコメディしてるのが見えてくるような気さえしました。

タイトルのブルージャスミンは憂鬱なジャスミンとも言えるし、青いジャスミンなんて、そんな花は存在しない、ジャスミンという女性像そのものが虚構であると言えるかもしれません。
ジャスミンの花言葉は、色々ありましたが、気品、しとやかさ、など。
名前が人を作るとも言いますが、ただジャスミンがジャスミンである事をやめてジャネットに戻らないとあのような現実を生きていくのは難しそうですね。

しかもブルームーンという曲がキーになっているような、、。あの曲がハルとの出会いのきっかけと言ってましたが、ブルームーンは極めて稀な事を言い表すことにも使うとのことで、ハルとの結婚自体がそうであったと気づかないといけなかったのでしょうね、、だからロマンチックな歌詞に浸ってるあいだはあの結婚も運命的なロマンチックなものに思えたけど、歌詞が思い出せなくてなってからは結婚自体も実のない形骸化したものに成り下がっていたのかもしれません。

そんなお先真っ暗なお話ですが、意外とほっこりした気持ちで観れたのは映画を通して流れてくるBGMのおかげでしょうか。1920年代頃のアメリカの雰囲気を感じました。当時のセレブ達の雰囲気も意識したのかもしれません。彼らもジャスミンのように堕ちていったから。

まぁもう一度観たいとはあまり思わないけど笑、満足度高い面白い映画でした!

ケイトブランシェットの優雅なセレブ時代とメイクドロドロにワキ汗ダラダラのズタボロの姿と演じ分けがすごすぎでした、、
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