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デデという娼婦のyのレビュー・感想・評価

デデという娼婦(1947年製作の映画)
4.4
娼館がメインの舞台のイヴ・アレグレ作品。デデがフランス語話者で、彼女が話すことのできない言語には字幕が付いていないのだが、視聴者の一部は周りの人間がどれだけ失礼な言葉を吐いているか分かってしまうという画期的な仕組み。他国から渡ってきて娼婦をしているデデが、いかに世間から煙に巻かれて生きているかを見事に表現する。弱音を吐かない彼女だが、実は言語の壁の高さへの悩みを感じていることを、悩める若者との対話で示す丁寧さ。
男が娼婦のうわさをすれば、娼婦は男の殴り合いを見てほくそ笑む。娼館という場所自体の是非には一切言及せず、バイアスをかけない作りになっているが、近年の映画を見慣れているとそこに不誠実さを覚える観客もいるかもしれないと思った。

或る夜、フランチェスコという紳士と運命的な出会いを果たす。店先で警備員をしているヒモに脅され金づるとして利用されては、好きでもない客と関係を重ねる日々の中で、自分を人間として尊重してくれる男に出会い、恋をする。彼女が鏡を見つめながら、首に巻き付いたスカーフを外す(首輪を外す)シーン、部屋から飛び出し、階段の手すりをひっかけて下っていく手のクローズアップからのフランチェスコ大写しが素晴らしすぎる。とてもシンプルで共感性の高いプロットを彩る、堅実かつ大胆に神がかった演出は、完成された古典映画の一つのような趣がある。
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