木野エルゴ

から騒ぎの木野エルゴのレビュー・感想・評価

から騒ぎ(1993年製作の映画)
2.4
原作準拠の正統派シェイクスピア作品。だって監督がケネス・ブラナー。キャストがとにかく実力派揃い。ユーモアがあって知的で威厳のあるドン・ペドロにデンゼル・ワシントン、その弟ドン・ジョンにキアヌ・リーブスを配するところが流石。仮面の宴で全員が前後不覚になるほど盛り上がっているのに、ひとり不満そうな顔で佇むところがもうまんま「マイティ・ソー」のロキ。光り輝く兄が疎ましい弟。ムカつくからとにかく騒ぎを起こしたがるところが本当にロキそのもの。

口達者なベネディックをケネス・ブラナー自身が演じ、相手のベアトリスにエマ・トンプソンを配したのも、なるべくしてなったという感じ。それぞれテンション上がってはしゃぐシーンがとにかく可愛かった。

ロバート・ショーン・レナードとケイト・ベッキンセールの恋人たちも全力で純粋さをアピールしてて眩しい。

そしてシェイクスピアに欠かせない道化師的役割のドグベリーにマイケル・キートン。動きといい表情といいキレがあって力強い。「バードマン」のヒットは必然だったのだ…

吹き替えキャストが現在のいわゆるFIXではないので、序盤は多少違和感を感じる。しかしキャラクターのことを考えればこれ以上は無いと思えるくらいのキャスティングなので、早い段階で馴染んでくる。安原義人さんの軽妙な語り口と、塩田朋子さんの知的で鋭い舌鋒があるからこそ、口達者なベネディックとベアトリスの良さが生きてくる。他のキャストも、シェイクスピア作品を数多く上演している劇団昴や文学座の俳優が多いので大袈裟な言い回しも違和感なく楽しめる。

カメラワークの粗さや唐突に入る歌でたまにペースが崩れるけれど、最初から最後まで楽しく見られる良いシェイクスピア映画だと思う。
木野エルゴ

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