エレキング

ロボコップのエレキングのネタバレレビュー・内容・結末

ロボコップ(2014年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

●ストーリー
2028年。デトロイトに本拠を置く巨大企業オムニコープ社は軍事用ロボットを中東の戦場に投入して莫大な利益を得ていたが、海外事業での好調ぶりとは対照的にアメリカ本国では販路拡大を阻まれ、苦戦を強いられていた。原因は、ヒューバート・ドレイファス議員が発案した、ロボット配備を規制するドレイファス法と、それを支持する多くの議員。何より、心を持たず命の尊さを解さない機械(ロボット)に人間の生殺を任せることに、世論の根強い反発があるためであった。国内にも販路を拡げたいオムニコープは、パット・ノヴァック司会のTV番組等を利用して世論誘導に努めるが、なかなか上手くいかない。この状況を打破すべく、CEOのレイモンド・セラーズはサイボーグ技術の権威であるデネット・ノートン博士に協力を求め、ロボコップ計画を立ち上げる。機械と人間を融合させたロボコップを造り出し、警官として活躍させることで、心無きゆえに嫌われてきたロボットを「人々に愛される」製品に変えようというのであった。

被験者として選ばれたのはアレックス・マーフィ刑事。彼は相棒のジャック・ルイス刑事と共に武器の密輸組織の内偵を進めていたが、汚職刑事のタレ込みから組織の仕掛けた爆弾によって瀕死の重傷を負っていた。彼の妻クララの同意を得たノートン博士は、アレックスの脳・心臓・肺以外を機械に改造し、ロボコップとして蘇らせる。当初は変わり果てた自分の姿に絶望し死を望むアレックスだったが、妻と息子のために生きろというノートン博士の説得を受け、ロボコップとしての活動に同意するのだった。しかし、性能テストを開始して早々にロボコップは問題を露呈。情報経路が複雑な上に感情ゆえの迷いを持つロボコップは、通常のロボットより遥かに判断が遅く、オムニコープの求める性能を満たせない。そのうえ、過去の犯罪データベースをインストールされた際に自身の殺害未遂事件の幻覚を見てしまい、システムエラーを引き起こしてしまう。ノートン博士ら技術陣は火器管制プログラムを強化しドーパミンの分泌を制御するなどして性能アップに努めるが、その結果アレックスは感情を抑制され、妻や子供、ルイスを見ても機械的な対応しか出来ない文字通りのロボットと化してしまう。

完成したロボコップは期待通りの性能を発揮。お披露目の場で顔認証を駆使して指名手配犯を即座に逮捕したのを皮切りに次々と凶悪犯を捕らえ、市民から熱烈な支持を得ていく。世論は徐々にドレイファス法の撤廃へと傾き、事態はセラーズの思惑通りに推移するように見えたが、捜査の最中にアレックスがクララと再会した事から変化が起こり始める。アレックスの脳内でドーパミンが復活し、抑えられていた感情が蘇る。自らの意思でプログラムを書き換えたアレックスは独自の捜査を推し進め、かつて自分を殺そうとした武器密輸組織を駆逐、遂には警察内部の汚職をも暴き出すに至った。

ロボコップが人々の喝采を浴びる状況とは裏腹に、オムニコープの重役たちは頭を抱えた。反ドレイファス法の広告塔に過ぎないロボコップは、ロボットの販売が自由化された後に不要の存在となり、プログラムの制御を離れ、オムニコープに都合の悪い汚職まで暴きかねなくなったアレックスは危険な存在となっていた。セラーズはアレックスを停止させ、その抹殺を図る。間一髪、ノートンの助けでラボを脱出したアレックスは、家族を守るためオムニコープに乗り込み、オムニコープのロボットと戦闘を始める。

――Wikipediaより、最初の1987年の『ロボコップ』について――
脚本を担当したエドワード・ニューマイヤーは、当時ユニバーサル・ピクチャーズの役員であり、毎日の仕事が退屈で仕方がなかった。その時にマイケル・マイナーから「ロボット警官の話を作ってくれ」と頼まれ、気分転換に本作の脚本を書き上げたが、そのタイトルを見たアメリカ中の監督に敬遠されて監督を依頼できなくなってしまったため、バーバラ・ボイルがポール・バーホーベンに白羽の矢を立てることになった。当初、バーホーベンはこの脚本を1ページ読んだだけで床に投げ捨てたが、妻から「シェイクスピアとは違うけど奥が深い作品よ」と言われて読み進めるうちに夢中になっていき、監督を承諾した。
――引用おわり――

なんか一癖も二癖もあるポール・バーホーベン(『スターシップ・トゥルーパーズ』では男女(軍人)が裸になって共同のシャワールームを使う描写があり、役者たちが嫌がって躊躇していると、バーホーベン監督自らが全裸になってお手本を示したという。余談だが、それにインスパイアされたのか『機動戦士ガンダム サンダーボルト』にも男女の兵士が共同でシャワールームを使う描写がある)ですが、1987年版の『ロボコップ』はグロ描写(ゴア描写)が中心となっています。
また、マーフィーが悪人に殺されるシーンが十字架にかけられたキリストのように見えること、更にキリストが復活したように、ロボコップが復活したことを踏まえ、キリスト教がベースにあるという考え方もあります。1987年のロボコップは低予算で製作され、世界中で大ヒットしました。

批評家たちは、『ロボコップ(2014)』についてゴア描写を期待したのではないかと思いますが、それではR指定映画(17歳未満の観賞は保護者の同伴が必要:アメリカ基準。日本のR指定は15歳以下)になってしまいます。クエンティン・タランティーノ監督の映画は殆ど全てR指定ですが、タランティーノほどのネームバリューがあれば兎も角、2014年にゴア描写はリスクが大きすぎると映画会社が判断したのでしょう。評価が下がった理由は1987年版と同じゴア描写を期待したからではないでしょうか?

『ロボコップ(2014)』の凄いとところ。
・役者が豪華で演技も素晴らしい。
・SF考証に隙がない。
・CGIの出来が良い。
・音楽の選曲が良い。
・なによりも家族愛がいい。

『ロボコップ(2014)』は、家族愛を中心としたヒューマン・ドラマとして観るべきだと思います。その見方で言うと、『ロボコップ(2014)』(以下『ロボコップ』)は最高です。

※この先、ネタバレあります。

まず、役者ですがマーフィー/ロボコップを演じるジョエル・キナマン(Netflix『オルタード・カーボン』の主役)ですが、演技も良いし、イケメンです。全身をロボコップにされてしまった悲哀が、ロボットのパーツを外されていくシーンで強く描かれます(このシーンのCGIも凄い)。

冒頭とラストに出てくる、原作(1987年)にもあった毒のある司会者役のサミュエル・L・ジャクソンは、流石というか、貫禄さえ感じる演技です。

ロボコップを造ったデネット・ノートン博士を演じるのはダークナイトの刑事役のゲイリー・オールドマン、善悪に揺れる難しい役を見事に演じきっています。特に物語終盤、善悪に揺れる心を振り切った演技が素晴らしいです。

そして、物凄くわかりやすい悪役にマイケル・キートン(バットマンやバードマンやビートルジュースの主演など説明不要ですね)。この人は本当に悪役が似合いますね。全く非の打ち所のない悪を演じきっています。

もう役者だけでお腹いっぱいというか、それぞれに良い演技をするんですね。何度も観ているとより味わいが増していく、噛めば噛むほど味が出るスルメイカのような映画です。
『新劇場版エヴァンゲリオンQ』を観た時も、みな「意味がわかんない」という評価でしたが、何度も観ていると段々と意味が判ってくる、あの感覚に似ています。

そして、なんといってもロボコップ/マーフィーの奥さん役のアビー・コーニッシュ、『15歳のダイアリー』でオーストラリア映画協会賞主演女優賞を受賞しています。他に出演作は『スリー・ビルボード』や『ジオストーム』など。あまり派手な経歴はありませんが、演技は実力派です。

この母子とマーフィーの〝家族愛〟に注目して観ると『ロボコップ』は実に素晴らしい作品です。

※以下、重要なネタバレがあります。

ロボコップは自分が殺された殺人事件のデータを脳にインストールされて異常反応を示してしまいます。それを抑制するために、デネット・ノートン博士(まだ半分は悪)が、ロボコップのドーパミンの量を下げて、感情を失わせてしまいます。

しかし、妻のクララ・マーフィの必死の訴えにより、機械の制御を離れて感情を取り戻し、自分自身、マーフィーを殺した殺人事件の捜査を始めます。この段階でデネット・ノートン博士はロボコップを遠隔操作でシャットダウンすることも可能でした。しかし、ノートン博士の正義感が目覚め始めてシャットダウンせずにロボコップに捜査を続けさせます。


ラスト・シーンでロボコップは、愛する母子を救うために、ボロボロになりながらレイモンド・セラーズ(マイケル・キートン)と対峙します。この〝愛のために戦うロボコップ〟というのが素晴らしい!
法規ではなく、復讐でもなく、愛のために戦う。実にカッコいい!

・SF考証に隙がない。
ジョニー・デップ主演の『トランセンデンス』は実に酷い出来でした。ジョニー・デップは最初から最後まで仮面をつけたかのように無表情。立て看板を置いていても代役になります。
そして、人間ひとり分のデータを、あんな短時間で送信できる筈がない。
人工知能の解釈に関しても陳腐。どうしようもありません。映画自体の評価も低いです。

いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのホアキン・フェニックス主演の『her/世界でひとつの彼女』も人工知能をテーマにしていますが酷い出来でした。人工知能の声はスカーレット・ヨハンソンが演じていますが、本当に退屈極まりない。そして、ラストシーンの人工知能の解釈も酷い。なぜ評価が高いのか謎です。

その点において『ロボコップ』は、死に瀕したマーフィーの命を救うために妻が手術の同意書にサインするシーンなど、アビー・コーニッシュが最高の演技をします。

デネット・ノートン博士はサイバネティクスの権威で、人工義手をつけた患者が再びギターを弾くシーンや、どうしても戦闘シミュレーションで人工知能に勝てないロボコップをバージョンアップするシーンなど、こうしたSF映画に於いてはありがちな設定の破綻(『トランセンデンス』や『her/世界でひとつの彼女』の人工知能に対する解釈は完全に破綻していました)が『ロボコップ』には有りません。
何度も観ましたが、SF考証の破綻した部分が見当たりません。これは凄いことです。他の映画で言うと、『2001年 宇宙の旅』位しかSF考証の破綻していない映画が思い当たりません。

※『インターステラー』や『アド・アストラ』でもSF考証の破綻している部分(科学的・物理的に有り得ない部分)が見受けられます。例えば、『インターステラー』の棒ロボット、ヴィジュアルとしては面白いのですが、現実的には有り得ません。未来永劫、あの形のロボットが民間・工業で使用されることはないでしょう。『アド・アストラ』は、父さん何食べて生きてたの?とか。空気は、水は、排泄は、などキリがありませんが、劇中には何の説明もありません。

・CGIの出来が良い。
『ロボコップ』のCGIは実に良く出来ていて、前述した人工義手でギターを弾くシーンなども、どうやったのか判らないほど出来が良いし、ロボコップが生体を残してバラバラにされるシーン、敵ロボットと戦う終盤のシーンなど、見せ場が沢山あります。
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