kenta

鍵 THE KEYのkentaのレビュー・感想・評価

鍵 THE KEY(1997年製作の映画)
-
ここ最近は嫉妬というものについて考えを巡らせていたのだが、映画がその理解を助けた。

純粋な、「あなた」と「私」だけの関係はあるのか。おそらく否だ。現実的に起こらないとしても、「あなた」が誰かを欲望することやされること、それはありうる。あなたと私の関係には「誰か」が入り込む可能性は常にある。しかしそれが愛を阻害するのかといったらおそらくそうではないのだろう。私はその誰かの存在を感じることで、初めて純粋な、あなたと私の関係を求めようとするのだ。むしろ純粋な、あなたと私の関係を求めようとすればするほど、強迫的に誰かを必要としてしまう、そのようなものなのかもしれない。(となると映画の人物だけではなく、みんな変態的では?)


しかし、そのような嫉妬、そして欲望を直接に伝えてしまっては野暮なのだろう。つまり「エロティック」ではないのだ。エロティックであるにはそれは秘められつつも伝わらなければいけないのだ。それが映画における日記だ。

「私」は「あなた」にたいする欲望を秘密の日記に書くが、秘密ではあるが読まれることを前提にしている。しかし読まれたことを私は知ってはいけない。あくまで秘密の日記でなければならない。(しかしこの欲望がまた屈折していて、「私」は「あなた」と「誰か」が求め合うことを欲することによって、「あなた」を求める。)
「あなた」も、日記を読み欲望されていることを自分が知ったと「私」に知られてはいけない。そしてその欲望に沿って行動し、それをまた秘密の日記として、伝わってはならない事実として「私」に伝える。これは欲望されることを欲望するからである。

そのお互いの、欲望の秘められたやりとり、それがエロティックなのだ。(日記を心に置き換えて考えると案外恋愛によくあることかもしれない)

少し話は変わるが、愛している人が、誰かと浮気をしているということに対するマゾヒスティックな快楽というのもあるのだろう。

最後になるが、原作を読もうと思う。そして谷崎の作品を色々と読みたいと思った。そして長々書いたが映画のレビューは全く書かずにおわった。
kenta

kenta