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パリ、ただよう花のOASISのレビュー・感想・評価

パリ、ただよう花(2011年製作の映画)
3.7
恋人を追って北京からパリにやってきた若い教師ホアは恋人に捨てられてしまう。そしてさまよい歩くうち建設現場で出会った男マチューに惹かれて行き2人は度々体を重ねていくという話。
ロウ・イエ監督によるラブストーリー。

遠山景織子似の主人公花(ホア)はいわゆるアバズレ女で、マチューもまた典型的なクズ男。
「出会って◯秒でセックス」ではないけど「一緒に食事したんだからもうオッケーだろ?」というのはあまりにも性急で、しかもそれがレイプ紛いの行為だったり、花もそれをなんか受け入れちゃうしでかなり性に奔放である。
でも快楽に喘いでいるというよりかは、ドラッグを注射されたみたいに枯渇していた体に水分が染み渡って回復していくような感じ。
体位はやたらバックが多いし、「そんなにピストンのストロークが長いと抜けちゃうでしょ」というくらい前後運動が激しくて、終始男性側が上位に立っているような状態。

花もマチューも、お互いが秘密を隠し持ちながら交わっているのでベッド上では無言の行為がやけに多いのだが、その営みの中にパリの町並みや美しい夕陽のカットか挿入され、二人の間にある侘しさや僅かな温もりを感じさせたりもする。
それでも、男性側から見たとしてもマチューの心内は全くもって理解不能で、これが女性なら尚更彼に対して魅力を感じずイライラが募っていくだろうなぁとは思う。
燃え上がる情動や渦巻く愛欲を表すようカメラが上下左右に激しく揺れ動くので、こちらまでそれに酔って熱に浮かされそうになってくるが、多欲、多情の女の埋められない心の哀しさが見えたりもした。

セックスと愛情は切り離せない物だと思っていたが、どうやらそうでも無いらしい。
もちろん交わりあっている際中は相手の事を最大限愛おしく感じているだろうし、そもそも愛していなければコトが始められるような準備段階まで来れないだろうと。
でも、別にセックスが目的でなくとも、無言で抱き合っている瞬間・相手の体温を肌で感じている時間が堪らなく幸福に思えたりする事もあるし、例え愛する人でなくても自分が愛されていると感じていれば本人にとっては満足なのだろう。
無言のベッドシーンからはそんな印象を受けた。

近頃は「ソフレ」や「イチャフレ」なる関係も生まれているようで、男と女の間に必ずしもセックスが必要だろうか?と人々も疑問に持ち始めて来ているのは分からないが、それとこれとでは満たす器の種類が違うというやつなのかもしれない。
器が大きいにこした事はないけども、それをいくつも持っていたらいつまで経っても満杯には出来ないし。
ホント、欲望って厄介ですわ。
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