人物の声や表情が本心を言ってるように信じられることをあまりに過大評価しすぎている昨今の映画とそれをめぐる言説を見るたびに疲れる。そんな一つの評価軸で映画が良くなるわけではないし、それはただ一つの表現方法でしかない。
本当に大事なことを何も語ることなく場合によっては嘘も紛れさせ、隠蔽する人がいるという事実によって歴史の層が出来ているという側面がある。そこへ目を向ける作家に惹かれる。
そうした明らかな嘘さえも堂々と見つめて、現実と並立するもう一つの虚構世界を立ち上げる透明な目の水晶体を磨き続けることが映画を見ることの喜びじゃないかという個人的思考はずっと変わらない。そして今作においてこの作家の記録の方法では、その領域に到達できてるとはどうしても思えない。
