『アデル、ブルーは熱い色』
アブデラティフ・ケシシュ監督
2013年公開 フランス
*英国映画協会選出「映画史上最高のLGBTQ映画」第11位
*「死ぬまでに観たい映画1001本 第5版」選定作品。
鑑賞日 2023年4月29日 U-next
まるでドキュメンタリーのように女優たちの演技が自然で、
179分の長尺物を感じさせない濃密な作品です。
単なるレズビアン映画ではなく純愛映画です。
【Story】
パスツール高校2年生で文学少女のアデル(アデル・エグザルホプロス)は女友達と恋愛の話をしたりデモに参加したり1年上級のトマと恋愛もする普通の女の子でした。
ある日、アデルは街で一瞬すれ違った青い髪のボーイッシュな女性に目を惹かれ気になってしかたがありません。
あの女性は誰だろう。
アデルは一瞬にして恋に落ちてしまったのです。
トマとのデートは平凡でセックスも燃えないので別れてます。
充たされない気持ちで毎日を過ごしていたアデルを仲のいい男友達のヴァランタンがLGBTのたまり場のバーに誘います。
そのバーでアデルは街で見かけた青い髪の女性を見かけました。
その女性もアデルの顔を覚えておりバー・カウンターでお互いの好きなものの話などをします。
青い髪の女性の名前はエマ(レア・セドゥ)美術学校の4年生でした。
数日後エマはアデルの高校に現れてアデルを誘います。
アデルの友達たちは個性的なエマに驚き興味津々です。
公園でエマはアデルをデッサンしますしながら哲学の話などでお互いを知り合います。アデルは携帯を持っていませんので去り際に自宅の電話番号をエマに渡します。
翌日学校でアデルの親友たちはエマは絶対に同性愛だから気をつけたほうがいいよとアデルを囃し立てアデルは怒ってもみ合いになります。
ある日アデルをエマの実家に招かれてアデルはごく自然にエマの恋人として扱われます。アデルは教師になる夢も彼等に打ち明けます。
アデルは哲学の勉強を手伝ってもらっている友人としてエマを実家に招き家族はエマを年上の友人として歓待します。
その夜二人は結ばれます。
数年後、二人は同棲していました。
エマはアデルをモデルにして絵を描き、アデルは幼稚園で教育実習する充実した日々を過ごしていました。
エマの絵を披露するためにアデルはホームパーティを開き、手料理を沢山つくってエマの友人たちを歓待しました。
そのパーティでアデルはエマと画家のリーズの親密な様子に動揺します。
エマの友人はみな裕福で自分の創作や研究に打ち込んでいるインテリばかりで気後れするアデルでした。
その夜ベッドの中でエマは高名な画廊のオーナーに評価されたことを心から喜んでいました。
アデルに文章で創作活動することをエマは強く勧めますがアデルはエマと過ごす平穏な日々だけで十分に幸せでした。
エマはリーズとの共同制作のために家を空けることが多くなったので寂しさを紛らわすためアデルはバーへ出かけ同僚のアントワーヌと親密な関係になってしまいます。
ある夜、アントワーヌの車で帰宅したアデルはエマにアントワーヌのことを激しく問い正されて関係を持ったことを白状し泣きながら謝罪します。
しかしエマは物凄い剣幕でアデルを罵り家から追い出してしまいます。
しばらく後にアデルはレストランでエマと再会します。
エマは展覧会を開き、アデルは教育実習の日々を送っていました。
エマはリーズとその娘と3人で賑やかに暮らしていましたがアデルは独りぼっちで過ごしていました。
エマはアデルを許したけれどもう愛していないと話し、2人は涙を流しハグを交わしてさよならを言い合います。
しばらくしてエマの展覧会の招待状が届いたアデルはブルーの服を来て展覧会を訪れてエマやリーズと再会します。
エマの作品にはアデルが描かれていました。
幸せそうなエマやリーズ、大盛況の展覧会を後にしてアデルは1人その場を立ち去ります。
【Trivia & Topics】
*カンヌ国際映画史上初の快挙。
2013年5月23日第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映され、最高賞パルム・ドールを獲得しました。
しかも監督と主演女優2人も受賞というパルム・ドール史上初の快挙です。
審査委員長のスティーヴン・スピルバーグ監督は「偉大な愛の映画、その一言に尽きる」と称賛しています。
*同性愛映画?
この作品はレズビアン映画というよりも一瞬にして恋に落ちた2人の人間の愛の奇跡と軌跡を描いた純愛映画です。
*固唾をのむセックス・シーン。
アデルとエマの7分間に及ぶセックス・シーンは映画史に残る美しい映像です。
生々しく官能的で2人の美しい肢体を愛撫する絶妙なカメラワークが素晴らしくまったくいやらしさを感じさせない極上のエロチシズムが香ります。
このシーンの撮影には10日間かかりました。
3台のカメラを使い1ショットに100テイクの撮影を要求し、6時間に渡ってオーガズムを感じる演技を続けさせたケシシュ監督の粘りと2人の女優の根性には脱帽です。
もっとも2人の女優とも監督が厳しくて今後絶対にケシシュ監督の作品には出演したくないと宣言しました。
*やってらんないわよ。レア・セドゥの場合。
エマ役のレア・セドゥはあの撮影方法は常軌を逸していた。監督は頭がおかしいとケシシュ監督を批判し「監督があまりにも長時間をかけるので『もうやめて!』と思っていた。本当にマリファナを吸ったり、ビールを飲んだり、時には飲みすぎたりすることもあった」と暴露しました。
*この作品にすべてを捧げました。アデル・エグザルホプロスの場合。
アデル・エグザルホプロスは「この撮影には1年かかった。この作品に私はすべてを捧げた。さまざまな意味で私の人生を変えた」とインタビューに答え、これまでのカンヌで心に残っていることについて聞かれると「最高の経験をくれたのは『アデル〜』だと語っています。
*エマのブルーの髪。
レア・セドゥは髪を撮影の数ヶ月前にカットして青く染めたのですが撮影中毎日染め直したのはケシシュ監督でした。
【5 star rating】
☆☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。