ノーランの凄さをこの1本で感じることができる。
クソ映画は「予告編の方がおもしろかった」という事態がよくある。
ノーランの作品はどの作品もこの真逆である。予告編ではなにもわからない。新作のテネットも、今の段階でおもしろそうかと聞かれたら「とりあえず見るしかない」の感想に尽きる。
ノーランが"映画通"を語る際のマストアイテムになる前、メメントやバットマンビギンズの予告編を見て「超楽しみ」と思った人はどれだけいるだろうか。
「今回のバットマンは地味でシリアスかよ・・・」
XMEN、サムライミのスパイダーマン等、アメコミ映画がヒットタイトルとして定番化している中、不安の方が大きく、ワクワク感は皆無だったことを覚えてる。
しかし、いざ始まってほんの数分でアメコミを見ていることすら忘れ、ゴッサムシティというリアルな世界に引き込まれる。
インセプションも全く同じだ。
予告編では突如街が壁のようにそそり立ち、わけのわからないスローな映像がすごいだろ!ってだけ。
しかし、そんなシーンはこの映画のごく一部でしかなく、むしろスルーして構わない。
人間が日常的に体感する、脳が作り出す夢の「感覚」を違和感なく映像化してしまっていることにただただ驚く。
見たことのない映像、現実感を持たせる音楽、アクション、引きつけるストーリーやセリフ、どれを取っても最上級の名作である。
ラストも最高。
「夢」の中で「夢」と気づく感覚、「夢」の中で「夢」じゃないかもと不安になる感覚、ここまで綺麗に上手に違和感なく映像化できる監督は間違いなくこの監督しかいない。