緑

そして泥船はゆくの緑のネタバレレビュー・内容・結末

そして泥船はゆく(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

英字幕付き。
耳から聞こえる日本語でのディスよりも
字幕のほうがキツい言葉に思えたのは
自分の英語力のなさに起因しているのだろうか。

渋川清彦の力量が他演者と違いすぎる。(大絶賛)
うまいけどなぜかちょっと苦手な役者のはずが
本作の渋川の芝居はどこまでも自然で非常によかった。
今後これ以上の渋川に出会うことはあるのかというくらい。

渋川の友人男性が一緒にいる時間が多く且つ寛容で
まるでギャルゲ主人公の便利な友キャラ。(貶してない)
突如現れたクソ生意気な今は亡き渋川父の隠し子女子。

原発被害を金儲けに使う新興宗教信者や
議員に立候補する渋川の元同級生や
隠し子女子を3万円でご購入の男性は、
渋川のディスや暴力の媒介。
渋川が発する日常的な言葉はもちろん、
荒くれた言葉に特に監督のセンスが光る。
特に新興宗教信者とのやり取りは両者ともおもしろかった。

若さゆえの驕りか年寄りに厳しい連中の
心無い言葉にイライラさせられ、
立ち去る渋川に共感しかない。
あそこで立ち去れるのはいいことだと思う。
追ってきた寛容な友人への態度はともかく。

水族館でシーカランスならぬピラルクを見てから
ストーリーが渋川の閉塞感への居座りを許さなくなってくる。
隠し子女子や寛容な友に散々に言われ、
現状を打破するために渋川が選んだ単発仕事は運び屋。
そしてここから超展開。(貶してない)
なんとなく天願イズムを感じた。

なにがどうしてこうなったのかよくわからないまま
長い時間が経っていたようで
髪も髭も伸び放題な渋川が超絶チープな宇宙人と遭遇。
着る毛布を纏った姿で林を走って逃げるが捕まり、
歪んだ映像とプリズムが行き来。
このままフェィドアウトのラストかなと思ったら
あの新興宗教信者が現れ、
渋川を人類を滅ぼしにきた神と思い込んで逃げる。

新興宗教信者がハンカチを落としまくった時点で
そのあとの渋川の行動が読めてしまったので
もう一捻りほしかったし、
劇映画となるとドラッグを出してくるのは癖なのか?
「八月の軽い豚」と2本立てだったせいで、
「転」の作り方が余計に引っかかった。

台詞の良さ、社会の動きへの態度は
今の大田原愚豚舎に通じているし、
本数を重ねるごとに洗練されているように思うので、
今後も期待し続ける。
今回劇映画らしい劇映画を2本観て、
大田原愚豚舎が新しく劇映画を作ったら
どうような作品になるのか気になった。
できれば違う「転」が観たい。
しかし、もし次も「転」がドラッグ絡みなら
それはもうお約束として
引っかからなくならなくなるかもしれない。
キリストモチーフもまた出てくるのだろうか。
緑