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ボーグマンのLOPのレビュー・感想・評価

ボーグマン(2013年製作の映画)
3.8
動機が不明確な暴力は不快で困惑をもたらす。
目的がない通り魔的な暴力に我々は戸惑い、立ち尽くす。
暴力の謎や目的が解き明かされることで私たちは安心できるのだが、この映画にはそれがない。
残るのは後味の悪い、不安な感情だ。

物語は、カミエル・ボーグマンという一人の男が郊外の裕福な家庭に侵入することで始まり、この家庭が暴力と狂気の奈落へと崩壊していくことで終わる。
このストーリー中、ボーグマンとその仲間たちの目的は描かれることがない。
なぜ彼らは侵入するのか。彼らの目的は何なのか。
この不透明さは私たちの恐怖を煽り、結末を知りたい私たちを画面に釘付けにする。

階級闘争や植民地支配を彷彿とさせるような寓話ではあるが、それもことさらには描かれることがない。
解釈は観客の想像力に委ね、私たちは冒頭の襲撃シーンやあの庭は何だったのかと会話を弾ませることになる。
余白を楽しむためのストーリーには歯痒い部分もあるが、充分に刺激的でもある。
この仄暗い風刺を楽しむためには相応の忍耐が必要ではあるが、、、
(同様の家庭内侵入劇を描く『パラサイト』に比べて、映画のテンポは一定で安定しているため、退屈に思う人もいるだろう。)

説明されることのない悪に魅了されると同時にその解を求める私たちは、不安と恐怖に満ちたホラー・スリラー映画を再び観漁ることになる。
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