オランダの奇才アレックス・ファン・ヴァーダーメル監督作品。2013年。
冒頭「そして彼らは自らの集団を強化するため地球へ襲来した」のテロップ。
森に向かう神父ら3人の男。槍と斧を持って、土をブスブスとさす。
下には穴掘って住みかを作って住む男。
巧みに逃げ出した男は、高級住宅街の家を訪れる。「風呂を貸して欲しい」と。
家主リヒャルトはその男をボコボコにして追い返すが、家に忍び込んでおり、妻マリナは夫に隠れて介抱する。
男に何故か引かれていくマリナ。
その男ボーグマンは、3人の子供と若い乳母の6人の生活に影を潜めながらも入り込み、ついに新しい庭師として同居生活を始める。
そして、ボーグマンと仲間たちは、少しずつ、少しずつ、彼らの生活を蝕んでいくのだ。
彼らの目的はいったいなんなのか。
ボーグマンたちの行動は不気味。
家に入るために、淡々と殺人をおかすが、その死体処理方法が独特で、頭だけをセメント入りバケツに入れて、湖に沈める。逆さになったスケキヨ死体が水の中で揺れる様はなかなか脳裏に焼き付く。
寝ているマリナの上に全裸で座っていたり。(夢を操っているらしい)
背中になんらかの処置をしたり。
不可解極まりない。
この映画で感じるのは、ボーグマンたちの謎の行動もさることながら、家庭内の不信感である。裕福でありつつも、うまくいかない夫婦間、子守りに任せっきりの子育て… 小さないばらのようにその不信感は蔦を伸ばしていく… 心の中に潜在的に潜む不満・暴力性、そして日常生活のストレス…
ボーグマンたちの登場は、ただのきっかけにすぎないのではないか…
無機質な家の外観もそれを象徴するかのようだ。
また、差別・移民問題も扱っているように感じる。
差別主義者の夫の肩にかかれた十字は、その意味があるのかなと…ただの手術のマークかもw
不条理であり理解出来ない部分、たくさんある。
謎の伏線も回収してくれない。
でも、最後はそうくるのねとニヤリとしてしまった。
ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム』と、『アンダー・ザ・スキン』を合わせた感じかな。
不条理で不可解。でも、良い。
シッチェス国際映画祭グランプリ
38年ぶりのオランダ映画カンヌ選出作品