ぽてと

トム・アット・ザ・ファームのぽてとのレビュー・感想・評価

4.1
これはサスペンスで括っていいのか…?
主人公は亡くなった「友人」の家を訪ねる。そこには「友人」の母と兄が住んでいた。

こんな田舎の農場で何が始まるの?と不安になる。そしてその不安や気まずさがずっと続く。気づいたらその「何が始まるの?」から「本当は何があったの?」に変わっていきました。
あまり多くを説明しないので謎もありますが、隠し事をするのがメインのストーリーなので…。

サスペンスの中でも、サイコ・サスペンスだったんですね。
危うい感情のぶつかり合いでしたがドキドキしてしまいました。
とても道徳的とは言えない、誰にも言えないし理解されないものを欲してしまう彼ら。
破滅しかないので本来なら否定しないといけないのです。いえ、最初から否定してたはずなのに。
タンゴのシーンでそれら背徳が解放されました。
全然違うはずなのにオペラ座の怪人的要素を感じたのは私だけでしょうか。

通常、登場人物の感情、動機を描いてナンボですけど、この作品は見た通りの情報でしか正直分からない。受け取り方次第のところもある。
でも他人への意味不明さは日常にある。
人はその上隠し事もするのだから当人は自分の心すら理解が難しくなる。
だから不器用で歪なものも生まれる。

にしてもこのお兄さんいつ爆発するか分からなくて怖いけど。
でもお母さんが一番頑固そう。
支配が支配を呼んでるのでは…。
主人公が支配されるというより、支配の連鎖に巻き込まれかけたような。
支配にもがいてるのは誰か。
あの似合わないUSAジャケットは学生の時に親に買ってもらったのかなと個人的に思う。似合わなすぎて。

最後に。
一刻も早くそこを離れろ、とずっと思って観てたのに。
そういう愛でもいいんじゃない。またUターンしてみてほしい。
という訳で快く道徳心を失いました。

私は音楽を聴くと映画のワンシーンを思い出す感覚が好きですが、本作のエンドロールの雰囲気は格別です。
ぽてと

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