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罪の手ざわりのTocoのレビュー・感想・評価

罪の手ざわり(2013年製作の映画)
3.5
実際に中国で起きた事件が参考にされたオムニバス形式の作品なのだが、登場人物たちの状況はゆるく重なり合う。青の稲妻と被るシーンもあり(ボロいバイクで走る、野外京劇など)監督の作家性を強く感じる。

列車や重慶の都市のシーンからは中国の近代化をヒシヒシと感じるのだが、そこに生きる人々の心の中をジャ・ジャンクーは実に空虚に撮る。政治と主義が歪み続けたまま拡大する国家の矛盾と人々の心は無関係になり得ない。勤勉な労働者の象徴である人民服がナイトクラブでセクシーなコスチュームになっているシーンは衝撃的で、それを香港や台北という経済特区の金持ちが搾取していることも、それなりに精神的恥辱のはずなのだ。

抵抗しようとする女性を金持ちが繰り返し叩き返すシーンがあるが、あの映像から感じさせるどうしようもできない無力感がずっしりと心に乗っかるのである。。
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