かーくんとしょー

武士道シックスティーンのかーくんとしょーのレビュー・感想・評価

武士道シックスティーン(2010年製作の映画)
1.5
誉田哲也の原作小説が非常に良かったため、実写化した映画を鑑賞。
ストーリーは高校女子剣道の話で、成海璃子は全中準優勝の勝利至上主義剣道オタク役、北乃きいは日舞から中学で剣道に転向してめきめき力をつけたものの勝敗には無頓着という役柄。
二人は中学最後の大会で戦い、北乃きいが勝ってしまったことが運命の始まりで、同じ高校の剣道部で再会した二人は(特に成海璃子が一方的に意識しすぎて)何かとぶつかり合う。

原作のイメージからすると二人の女優が可愛らしすぎるのは仕方ないにしても、せめて雰囲気だけでも似せてほしいのは原作ファンの心情。
また、スポーツや音楽を扱う作品で問題になる〈演技〉については、この作品も例に漏れず。
というよりもめちゃくちゃ酷い。

北乃きいが成海璃子に勝ったシーンも、高校の大会で勝つシーンも、なんで相手は突っ立ってるの? 気絶でもしてた?
剣道では好機として、相手が出るところ・引くところ・尽きたところ、とよく言われるが(一番簡潔なパターン。内容や表現には地域差あり)、せめて自然に見せるためにはそういう状況を作らないと。

そもそも主演の二人や製作陣は一度でも全国レベルの女子剣道の試合を見たのだろうか。
そして自分たちの作った作品がその試合を再現できていると感じたのだろうか。
足りないものを埋める努力をしたのだろうか。
とてもではないがそのようには見えない。とても全中準優勝者とそれに勝った選手には。

作品の問題点は上記のものだけではない。
(例えば、成海璃子の役は負けず嫌いを超えてあまりに粗野な性格になってしまっているし、北乃きいの役の立ち振る舞いはとても日舞と剣道をしてきた人間には見えず、また家庭に問題を抱えた思春期の少女にも見えない。)
だが、これ以上わざわざして挙げるまでもないだろう。

結論を言えば、本作は努力不足の作品だ。それも絶対的に。
少なくともそういう作り手の態度が透けて見えたり、伝わってしまう作品は、良い部分がいくらかあろうが原作が好きだろうがキャストが好きだろうが、鑑賞者の心を繋ぎ止めることはできないということだ。

written by K.
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