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オーソン・ウェルズの フェイクのhighlandのレビュー・感想・評価

3.0
編集と詐術についての映画だが、まず単純に編集が早くて驚く。静止画多用しカット数がめちゃくちゃ多い。フェイクドキュメンタリーというよりはフッテージを用いてウェルズの哲学を全面展開したものとしてとれる。
贋作作家エルミア(芸術の価値について問いを発する)とそれを追う小説家アーヴィング(これまた胡散臭い)、彼と関係が疑われるハワードヒューズ(事実関係が怪しい)、時折顔を出すオヤコダールという女性、そしてそれらを取材して映画を編集していくオーソンウェルズ自身(彼自身のフィクショナルなバックグラウンドも提示される)、そしてコダールに関係するピカソと5つ6つくらいの要素が入り混じって並行して語られていく。直線的なストーリーラインは存在せず、それらのエピソード間をつなぐのはナレーションによって語られるウェルズ自身の連想である。作品を構成するあらゆる要素そしてその組み合わせ方が虚構なしには語れないもので、それらを語る詐術(やその中に配置された芸術そのものが持つ説得力)それ自体によって映画全体が強度を獲得していくという思想には共感してしまう。ただ、ウェルズがナレーションでずっとしゃべり続け、1カット2,3秒くらいで様々な要素に切り替わっていくので体験としては飽きるし疲れる。オーソンウェルズの白黒映画見るとわりと眠くなってしまうのだけれど本作は別の意味で寝そうになった。冒頭10分くらいの上手いんだか下手糞なのか分からない継ぎはぎだらけのカット繋ぎとかは正直見ていて笑えてくる。遊びを利かせる箇所は感触としてJLゴダールに近いとこはある。晩年の(?)ウェルズがこういう風になっていたとは。被写体としてのオヤコダールに釘付けにされるピカソの静止画がカットが変わる度にどんどん歪んでいき、ピカソ自身の絵のタッチに変わるシーンはいかにも’70年代~って感じのけばけばしさで、こんなことするのかと意外だった。 2018/11/02 DVD
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