POPCORN

フィフス・エステート 世界から狙われた男のPOPCORNのレビュー・感想・評価

4.3
近代の勇者達が情熱とビジョンを持って始まりを迎えた〝第4権力″(ジャーナリズム)に続く次代の情報革命=強力な〝第5権力″(フィフス・エステート)の物語。

いやはや度肝を抜かれました。A.I.も恐いですがこちらも現代における一種の危険領域に思えてなりません。鑑賞後、どこからが真実で、どこからが正義なのか、自分の良識定規が狂ってしまいましたが、ジャーナリズムの進化形として、旧体制からの離脱という意味ではこれもひとつなのかもしれません。

ところで皆さん〝ウィキリークス″ってご存知ですか?
私はお恥ずかしい、この作品に出会うまで知らずがゆえ、しかも実在する人物がこれを運営しこの現象を起こしていることに衝撃でした。

物語は〝ウィキリークス″の創始者ジュリアン・アサンジ目線ではなく、片腕ダニエル目線で語られます。彼なりの精査・ジャッジがあるからこそ、それは正義に到達しそうになっていたが、そのたかが外れた瞬間、匿名性の情報を公表することがどこまでが正義で、どこからが罪なのか、分からなくなります。ネット社会というより、国家や社会正義とは何なのか…。嘘も、不正も腐敗も、情報漏洩も、情報操作も、情報隠蔽もどれひとつとっても、ネット社会というフィルターを通すと、真実ではない可能性があるという危険性がこの世には決定的に存在するのでしょう。
まさにメディア革命、もう次の時代なんですよ、きっと。感覚的にですが、人はこの領域を作ってしまった。この世界で起きる奇妙奇天烈で、恐ろしい現実。この代償は知らず知らずの内に大きなものになって、もう手の施しようがない状態なのかも知れません。でも人は人であり、長い時間を共有しても、相手の本質だけは分からない。だから情報も人の手によるものでありそこにエゴが加わると、話がすり変わり、全く違う意味合いを持つようになる。でも現代の秘密主義的な権力に対するジャーナリズムを考えると、ウィキリークスは勿論必要性は必然でしょうが、ジュリアンの思想や行動は恐ろしく映ってしまいます。

内部告発サイト〝ウィキリークス″の創設者ジュリアン・アサンジが、危険をかえりみず〝様々な腐敗″の情報開示という武器を巧みに操り、国家権力や社会正義のため不正に立ち向かう姿を描いた内容です。告発者を守るセキュリティは万全、匿名を守り、隠匿情報をとことん開示する彼の姿勢にひかれた仲間たちは、世界的な新聞社やテレビ局を上回る秘密情報の幾度となく発信していきます。そして彼らが暴露する情報は次第に過激で危険なものになっていき、アメリカ国防総省や世界の国家機関がウィキリークスを脅威として敵視していきます。その情報公開は様々で、〝ジハードの訓練マニュアル″〝米軍内でギャングの抗争″〝英国 国民党の党員名簿″〝コートジボワールでの有害物の不法投棄″〝コソボ政権の汚職″〝米国軍事基地のテロ容疑者の取扱いマニュアルの公開″〝カウプシング銀行やジュリアス・ベアなどの銀行の不正″〝ケニアの警察による400人暗殺の関与″〝イランでは原子力事故″そして遂には〝米軍による…″まで手をつけることになる…。

そもそもウィキリークス(WikiLeaks)とは…
Wikipediaとは全く性格が違い、ジュリアン・アサンジが立ち上げたいわゆる内部告発wiki。匿名により政府、企業、宗教などの機密情報を公開する新興のウェブサイト。投稿者の匿名性を維持し、機密情報から投稿者が特定されないようにシステム化されている。告発は投稿プラットフォーム(ジュリアンが20代で開発したラバーホースで情報を何層もの偽造データの下に隠したもの)に収集される、この形は〝ウィキリークス″のベースだそうだ。常に私達は偽の情報源から偽のデータをアップロードしていて、そうすれば本物の情報源は監視不可能にしている。告発者の存在は永遠に秘密、告発文書の追跡も不可能、そして情報は突然投稿プラットフォームに現れる…。

ストーリーは…
2009年アフガン戦争における民間人の犠牲者や特殊部隊に関する情報、そして複数の兵士の戦争犯罪を告発する記事を米英独の3誌(ニューヨークタイムズ・ガーディアン紙・シュピーゲル)が同時刻に連携して配信します。その情報源は新興のネットサイト〝ウィキリークス″だと言うことは知られてしまっていてホワイトハウスは当然こ立腹。国家の最高機密を暴露したことを極めて非難していた。この中心にいた人物がジュリアン・アサンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)。住所不定、逃亡生活を送り、変装や偽名を使って追跡を逃れていて、その存在は皆も知る術がない程。アメリカ政府は彼を反米主義者とし危険人物扱いをします。そして話は2年前にタイムスリップし2007年ベルリン。ダニエル・ベルクと人権活動家のジュリアンが出会い、ウィキリークス誕生の瞬間。「報復行為に恐れるがゆえ人は告発に二の足を踏んでしまう。その恐怖心をを取り除くべく〝暗号化の技術で個人の自由やプライバシーを守るために戦うサイファーパンクの存在″や〝データや身元を隠す暗号プログラムはジュリアン達が開発″し、この暗号技術が新しい社会正義のカギとなり得るんです。我々が受け取る文書には数百人のポランティアが調査します。暗号技術を高めた結果、管理者の私にすら告発者の身元は分からないんです。身元を明かさず内部告発できるなら、恐れるものは何もないと熱弁を振るいます。そして2人の活動は始まっていきます。

2015.6.30
POPCORN

POPCORN