しーかず

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅のしーかずのレビュー・感想・評価

3.8
良い映画だった。モノクロの映像も、ゆったりとした雰囲気を醸し出す音楽も素晴らしい。老人ウディとのネブラスカへの旅の中で息子のデヴィッドが父親の過去や人間性の切れ端を知って旅の前とは違う感情になっていくところが描かれていて、旅の途中母と兄も合流するあたりすごく良かった。宿にするウディの兄弟の家でのシーンも親族みんなが無口なのが伝わる誰も目を合わさない盛り上がらない世間話に笑ってしまったし、全体的にストーリーとは関係のない会話シーンをはしょらず細かく描写することで家族関係やそれぞれの人間性がリアルに伝わってきた。説明なしで会話シーンだけでそれが伝わってくるのは凄いし、個人的にかなり好みの演出。デヴィッドと兄ロスの一定の距離がありながらも決して仲が悪いわけではない感じもすごくリアルに感じた。特にウディの昔の恋人であるペグの存在は印象的で、結局ウディの過去も多くは明かされないことによって、どうしようもない父親だけど、それに行き着くまでに様々な出来事があったことを感じさせる余白がすごく良い。結局大きな展開はないロードムービーと日常が混じる比較的地味な作品ではあるけど、素っ気なさの中に温かみもあるリアルな親子関係が描かれてて素晴らしかった。
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